事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「カポーティ」Capote ('06 ソニー)

2008-06-03 | 洋画

299844capoteposters    文章を紡ぐ上でまちがいなく天才。繊細な筆致、奇抜ではあるけれど的を射たレトリック……トルーマン・カポーティは若くして文壇の、そして社交界の寵児となる。しかし反面、悲惨きわまりない幼少期をすごし、同性愛者であり、矮小な体躯にコンプレックスを抱いてもいた。だからこそ奇矯なふるまいがゴシップ欄をにぎわせたのかもしれない。

 そんな彼が、家族全員が惨殺された事件の新聞記事に目をとめる(ここから映画はスタートする)。自分が事件を描くことで“何か”を生み出すことができると感じたカポーティは、幼なじみの作家ハーパー・リーとともに現地に向かう……

「アラバマ物語」の原作者であるリーが、作中で描いた“いつもやかましい隣家の子ども”こそがカポーティだった経緯を知っている方が、どちらの作品も楽しむことができるだろう。「アラバマ物語」の試写を観たカポーティが、酔っぱらいながら「騒ぐほどの映画じゃない……」とつぶやくシーンの深みを感じとることができるはずだからだ。

 二人の殺人犯が逮捕され、セレブである立場を利用してカポーティは彼らに接触する。ここから、カポーティの地獄が始まる。
 一方で、あのアヴェドンを連れてきて犯人たちを撮影させるなどのスノッブさを見せ、もう一方で犯人のひとり、スミスを愛してしまう。作品を完成させるためには彼らの死刑を見届けなければならず(そのために早期の執行を願ったりする)、しかしその死は同時に“恋人”を失うことを意味する……作品名『冷血』In Cold Bloodに自虐的な意味もこめていたのではないかと言われる理由がここにある。

Capote01 フィリップ・シーモア・ホフマンが、作家としてのエゴと犯人への想いに引き裂かれるカポーティを、ものまねの域を超えて絶妙に演ずる。アカデミー主演男優賞納得。彼をとりまく役者たちの“ニュアンス”の演技もまたすばらしい。傑作!

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