事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「オカルト 現れるモノ 隠れるモノ 見たいモノ」 森達也著 角川書店

2012-05-05 | 本と雑誌

32741050 興味深いやりとりがある。

「科学が解明できないから認めないとするその姿勢は、今の人類の精神レベルがまだまだとても低いことを表していると思うのよ」

「精神レベルって?」

「レベルはレベルよ。進化の度合い」

「……レベルの話はともかくとして、その論法を使えば何でもありになってしまいます。それは危険ですし、少なくとも科学者の態度ではない」

「そんなことを言って否定してばかりいるから、人類は高いステージに行けないのよ」

「事務職員へのこの1冊」最多登場を誇る(うれしくはないでしょうが)森達也のバリバリの新作。事実上の「職業欄はエスパー」PART2であり、雑誌連載中は実際に「職業欄はエスパー2」というタイトルだったみたい。

去年読んだ「死刑」につづき、森はまたしても結論のでない課題のなかで逡巡し、しかし取材をつづける。森は上のふたりの会話のどちらにも肩入れすることはないし、できないのだ。

それにしたって「高いステージ」に行きたいとは、どれだけ現世利益を求めているのかなあと呆れるけれども。

今回もスプーン曲げ清田、UFO観察家、陰陽師(政治家に多大な影響を与えていたとか)、臨死体験者(この人のいかがわしさはすごい)などに実際に話を聞き、あるいは超常現象を見せてもらい、そしてあいかわらず戸惑っている。

前回特集したときにふれたように、わたしも元同僚マジシャンの

「彼ら(超能力者)がスプーン曲げにこだわるかぎり信じない」

に同調している。神も信じない。というより、心の底から神を信じるという心性がどんなものなのか、想像もできないでいる。オウム以降、オカルトの立場は弱まり、しかしその分だけねじれているという森の判断はおそらく正しい。

ただ、これだけ多くの人が占いを信じ、奇跡を信じ、神に祈っているその底には、なにものかを信じたい、信じ続けたいという素直な気持ちがあるのだと思う。

その気持ちがあるかぎり、オカルトはなくならないだろうし、わたしも殲滅しようとまでは思っていない。森の戸惑いに、少しシンクロしています。

伊坂幸太郎が惹句で語っているように、確かに「青春小説のように、もしくはホームズの冒険のように」読める快作です。

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