キネマ旬報ベストワン作品。クリント・イーストウッド寄り(笑)と勝手にわたしが思っているキネ旬だけれども、わたしだってイーストウッドのファンなのだし、どうしてこれまで4年間も見逃していたのだろう。
わかってはいるんです。4年前、山形での会議を終えて速攻でこの作品を見るためにフォーラム山形に向かったの。そしたら予想外の渋滞でアウト。いつかDVDで見ることもあるさ……こういうとき、縁がなかったんだなあと見ないで終わる映画ってたくさんあります。わたしはそういうタイプです。
馬鹿だった。4年間を空費していたとすら。会議を途中で脱けてでも見るべき映画でした(社会人としてめちゃめちゃ怒られるでしょうが)。
フランキー・ヴァリの生涯を描いた(あ、まだ存命だからそんなことを言ってはいけない)ブロードウェイミュージカルの映画化。フランキー役は舞台と同様にジョン・ロイド・ヤング。強力なファルセットの持ち主なので、余人には代えがたい。あの大スターがマフィアと関係を持っていた……という暴露ものではなく、マフィアがたまたま美声の持ち主だったぐらいの描き方。
え、誰だフランキー・ヴァリってですって?ほら、フォーシーズンズの……知らない?知らないはずがないんですよ。だってあの「シェェェェリィ♪」って曲を聴いたことがない人はいないでしょう。彼と組むことになる作曲担当のボブ・ゴーディオ(彼らを引き合わせたのはなんとあのジョー・ペシ!)は、フランキーたちに「これがおれの曲だ」と紹介するのがShort Shorts。あのタモリ倶楽部のオープニングテーマ。あたまに女性のお尻がちらついて(笑)。
節目節目にヒット曲が挿入される。そして、フランキーが最愛の娘を失ったときに、あの名曲がズドンと来る。「君の瞳に恋してる (Can't Take My Eyes Off You)」ここは、見せどころ、聴かせどころでした。
“君”とは誰なのか。泣かせどころでもある。
しかしイーストウッドは、いかにもミュージカル的な盛り上げを回避し、例によって淡彩な演出に終始している。映画でも音楽でも達人であるイーストウッドだからこそできることでしょう。もちろんラストには、これぞ映画におけるミュージカル!ってシーンも用意されていますが。
「あいつのことだから」
と許されていた(あきらめられていた)
ような気もする(T_T)