鶴岡まちなかキネマには、平日の朝なのにけっこう高齢者を中心にお客さんが入っている。そしてその全員が、見終わってから一言も発することなく外へ出て行った。こんなことがあったなんて知らなかったという驚きと、あまりにもむごい戦争の実態に打ちのめされたからか。
太平洋戦争における沖縄戦のことは多く語られている。沖縄本島の南部から圧倒的な戦力で米軍が襲いかかり、日本軍と住民は大きな被害を……ここまでは、ある程度歴史を知るひとなら常識の範囲だろう。
しかし、北部で行われていたもうひとつの戦争は知られていない。日本軍の将校が、十代の少年たちを組織してゲリラ戦を展開していたのである。その隊の名は「護郷隊」。郷土を守るという意だが、しかし彼らの活動は次第にねじれていく。
映画の冒頭に、残酷な映像も入っているが、それは少年たちが戦争によってどんな心の傷を負ったかを観客に類推してもらうためだとテロップが入る。まさしく、凄惨な映像が連続する。手足が引きちぎれているのはいい方で、身体がぶち切れ、ハエがたかっている画面にはさすがに目を背けたくなった。そして当時の少年たちは、そのことに何も感じなくなっていくのである。
生き残った“少年たち”が、その戦いがどんなものだったかを語る。ほとんどが80代の彼らは、つまりは地獄を見た人たちなのだ。それはゲリラ戦のさなかだけでなく、戦後にPTSDを発症して座敷牢に閉じ込められた人も含めて、だ。
ここまでが映画の半分。観客は考え込む。これは「沖縄スパイ戦史」ではなく「沖縄ゲリラ戦史」というタイトルの方が正確ではないかと。しかし、ここから映画はもっとおそろしい事実を明らかにする。以下次号。
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