たった今、知りました。樹木希林が亡くなったことを。これが日本の映画界にとってどれだけの損失かはこれから次第にわかってくるだろう。とにかく、驚いています。彼女は死なないものだと思っていたので。
これだけ大きく報じられるについては、渥美清の場合はまだわかりやすかった。彼は松竹という会社を事実上「寅さん」というファンタジーの登場人物で背負っていたので、退場がドラマである以上に事件だったわけだし。
彼女の場合は微妙だ。わたしたちは彼女のことが大好きだけれど、いつの間にこうなったのだろう。「七人の孫」を見る世代ではないし、岸田森との関係も後付けで知ったわけだし、それ以前の新劇時代はおよそ把握できない。
どうしたってわたしにとっては悠木千帆時代、特に「時間ですよ」が衝撃。久世光彦と向田邦子という希代の作家によって、しかし意図的に軽くつくられたあの番組はすばらしかった。そして久世の以降の番組にとって、樹木希林の存在は不可欠なものであったろう。郷ひろみとのデュエットなど、いま思えばよくも実現できたと思う。ロックンローラーの夫への返歌だったのか。
名女優としての地位を確立したのは、わたしは見ていないので(原作で泣きすぎて見られないです)「東京タワー」なのはきっと定説になっていくんだと思います。そして以降、特に是枝裕和と原田眞人という、とりわけ生意気な作家たちの作品で、毒舌を吐きながら“日本映画史上もっとも微妙に”演じきったわけだ。
だから彼女には、才能があふれている人間しか対応できない凄みがあったのだろう。久世光彦、是枝裕和、原田眞人にはその度量があったということか。
これからの映画作家にはつらい時代が来る。樹木希林というジョーカーを使う手が封じられたのだ。これはきつい。実はおれもかなり哀しい。ううう。
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