事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「カルピスをつくった男 三島海雲」 山川徹著 小学館

2018-09-17 | 本と雑誌

日本人の99.7%が飲んだことがある、という数字に驚愕。カルピスのことである。この本はカルピスをつくりあげた人物の評伝。

三島海雲。

名前でわかるように僧侶である。明治11年に大阪の浄土真宗の貧乏寺に生まれた彼は、仏教大学を中退し、大陸に渡る。そこで出会ったのが、モンゴルの乳製品。帰国した彼はその味をもとにカルピスを発売し、国民飲料に育て上げる。しかし……

わたしたちは、どうしてみんなカルピスを飲んだことがあるのだろう。コカコーラやペプシではこうはいかない。乳酸菌飲料が身体にいい、というイメージが国民に浸透した結果に違いないし、そのイメージはカルピスがつくりあげたものだったのだ。

初恋の味、というフレーズはしかし、戦前はいまよりももっとセクシーな意味で受け取られがちなので反対されたとか、カルシウムのカルと、サンスクリット語で醍醐を意味するサルピルマンダのピルをつなげて、当初はカルピルという名でいこうかと考えられていたとか、エピソード満載。書いたのは上山出身の山川徹。いい仕事です。

そこから見えてくるのは、三島という人物が、山川が語る以上に奇矯な人物ではなかったかということだ。宗教者として、冒険家としてカルピスにたどり着いたことは確かにすばらしい。しかし保有株に無頓着だったりで経営者としてはいかがなものかと思うし、家庭人としては最低に近い(妻を日本に置き去りにしたまま延々と中国に居座るとか、末期のことばが、社長職を絶対に継がせなかった長男への謝罪だったあたりは哀切)。

三島が逝ってから、会社は味の素に吸収され、いまはアサヒ飲料傘下にいる。自動販売機戦争に勝ち残るには、これしかなかったのだろうとは思う。カルピスウォーター(カルピスってこんなに薄くてもおいしいんだとびっくり)のヒットがなかったら、はたしてこの会社は……

いやいや、カルピスをなめちゃいけないよな。国民飲料の座はゆるがないだろう。だって、カルピスおいしいもの。わたしはカルピスチューハイも大好きだもの。日本人みんなが、あの味が大好きだもの。帰省先でおばあちゃんが出してくれるのは、やっぱりカルピスだもの

庄内農業高校がつくっているニューピスもわたしは大好き。でも厳格に訳すとこれって新しいオシッコってことじゃない?カルピスも牛のオシッコって……。

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