鶴岡まちなかキネマのオープニングアクト。「ハート・ロッカー」「ディア・ドクター」そしてこの「スラムドッグ$ミリオネア」と、アカデミー受賞作やキネ旬ベストワンをそろえて壮観。ただ、この三作でわたしが“観ないとすれば”「スラム~」だろうと思っていた。
どうして観る気にならなかったかというと
・そら恐ろしいほどの貧困の物語であるあたりがつらい。わたしはビンボー物語が苦手。
・「クイズ・ミリオネア」がネタになっている以上、最後にはどうしたって失望の瞬間が主人公に訪れるのではないかと予想(わたしはハッピーエンドが好き)
・アカデミー賞のためにすでに名画あつかいされているが、はじめはメジャー公開すら危うかった。だから商売として、娯楽としてきつい作品なのかと思っていた。
・あの「トレインスポッティング」「28日後」のダニー・ボイルのことだから、観客を疲れさせるような、ひねくれた映画になっているのではないかと勝手に結論。
……それでも観ることにしたのは、DVDですでに観ていた妻が「すばらしい映画だったわよっ!」と力説したから。それじゃあ、と(この映画を観るためなら帰りが遅くなってもいいんですって)。
事前の予想はことごとく裏切られた。もちろん日本人からは想像もつかないほどの貧困が作品の背景にあり、“スラムからはい出た最初の人間”であるミリオネアの司会者が、あるひっかけをかますあたり、ダニー・ボイルらしさは健在だけどね。実はクイズ・ミリオネアのキモであるライフラインと携帯の使い方など、うなるほどうまい。
あきれるほどのハッピーエンドに酔いながら、しかしこうも思った。主人公の幸運を引き立たせるために、前半の悲惨さは不可避だったのかもしれないと。同様に、世界でいちばん美しいのはインド女性だとわたしは結論づけているが、ヒロインのその美しい顔に残された傷も、彼女の後半生の幸福さをむしろ引き立たせるツールになり得ている。確かに、みごとな映画だった。アカデミー賞納得。
ところで、わたしが本に耽溺するきっかけになったのは小学生のころに読んだデュマの「三銃士」なんで、あの設問には泣けた。あ、ちょっとネタバレ。
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