事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ギフト」フジテレビ1997.4.16~1997.6.25

2007-11-15 | テレビ番組

Takuya_kimura

PARTⅠはこちら】

飯田(NIGHT HEAD)譲治、井上(ひまわり)由美子脚本

42歳の男がいきなりキムタクに目覚めたことに何か文句ある?PARTⅡ

 で、キムタク。この男の凄いところは、共演者たちやスタッフを、いわゆる“キムタク流”ドラマに染め上げる力を持っていることだ。わかりやすく言うと、不自然なぐらいに自然な演技を強制する、というか……全然わかりやすくなってないな。

うーん、今期(当時)の月9のドラマ「人にやさしく」を例にとるといいかな。同じSMAP主演ドラマでも、こちらはセリフの8割が絶叫で出来上がっていることにお気づきだろうか。いや私は初回でいいかげん呆れてしまってもうほとんど見ていないのだが、視聴者を納得させるための最も安易な方法→全てをセリフで説明し、強調したいところは“音量”で勝負する、こんなパターンに終始しているのである。泣かせる場面なら、一拍置いて、せーので相手の胸ぐらをつかんで唾をとばしながらセリフを絶叫するわけね。

 これは、演出として安易だという以前に視聴者の怠慢を助長している。あ、今から泣かせる場面が始まるんだ、というシグナルをご丁寧に視聴者に提供しているのである。バラエティで、クドいぐらいに字幕を入れて、さあみなさんこれで笑ってくださいね、というパターンと一緒。「人に~」だけでなく、今のテレビってほとんどこんな視聴者への過剰なサービスに充ち満ちている。

 違うじゃん!と誰かの胸ぐらをつかんで私は絶叫したい。小一時間問いつめたいわけ。こんなことで日本のテレビドラマが進化するわけないだろ?と。

Smap  この「ギフト」。木村拓哉は記憶喪失の男、という設定もあるが、ほとんど反射神経だけで話しているかのように演じている。私流に言えば「脊髄でしゃべっている」かのように。相手の言葉にとまどいや反発がありながらも、とりあえず何らかのリアクションをちょっと示して見ました、ぐらいの。でも現実ってその通りじゃない?脚本家が考えに考えたセリフみたいなのって、恥ずかしくってちょっと話せないでしょう?みんなとりあえず“現実というドラマに参加するために気の乗らない発言を繰り返している”んじゃないのか?ひょっとしたら賛同されないかもしれないけれど、私ははっきりとそうです。

 で、そんな人間にとって、生活すること自体が面倒くさそうな木村の演技は、今のブラウン管の中では、そう、不自然なくらいに自然に見えるのである。そして彼のエライところは、先ほども書いたように、すべての出演者を、生活の面倒くささに辟易しているような演技に巻き込んでいることだ。このテの巻き込みはスターとしての特権だが、これだけの影響力のある役者は、知る限り共演者やスタッフを殴りまくった松田優作しか私は知らない。ギフトでいえば、拙劣きわまりない忌野清志郎(我が青春のRCサクセション)の演技が、あ、引きこもりならこんな感じだよな、と感じられるのも木村の気だるい突っ込みのせいだし、いつも何かしら過剰な角野卓造が、「HERO」では程良く気弱な上司を演じていたのも、私は木村のおかげだと思っている。

 そう、木村拓哉は、若いくせに、受けの演技が抜群にうまいのである。これは、コメディアンとして究極の才能だし、少なくともこの点で松田優作を彼が凌駕していることは確か……これが、今回の結論。ここまで持ってくるのになんでこんなに字数がいるのか、と怒らないで。次回は、この調子で工藤静香とジャニーズ事務所についてちょっと語ってみる。

※脚本の飯田譲治は、実は意外に上質なミステリー作家でもある。「ギフト」に関しては、井上由美子が書いた回の方が出来はいいが。その井上の代表作はNHKでやった「照柿」(原作高村薫)だ。野口五郎好演!

PARTⅢにつづく】

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