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42歳の男がいきなりキムタクに目覚めたことに何か文句ある?PARTⅢ
PARTⅡまでにお伝えしたように、コメディアンとしての才能バリバリにして、若手のくせに(それでも当時29歳になっている)受けの演技に卓越したところを見せる木村拓哉だが、彼にもそれなりのピンチはあった。言うまでもなく、その一つは工藤静香との結婚である。
よりにもよって工藤静香だよ。どう考えてもヤンキーの選択。ファッションリーダーとして常に注目されるキムタクにとっては、深紫に縁取られたような(深い意味なし)ゾクのアイドルを妻にしたことって、ファンへの裏切りに近かろう。それでなくとも、長年付き合っていた女を切って捨てたことで反感をかったわけだし。
加えて、スマップが実はジャニーズ事務所の中では決して本流ではなかったことも忘れてはならない(いや、別に忘れてもかまわないマニアねたですが)。冷静に彼らを眺めると、確かにヨゴレに近い存在ではある。
ジャニーさんだのメリーさんだの一体何者だお前らは、と言いたくなるこの事務所は、現在長女が実権を握り始めているらしい。その彼女とスマップの女性マネージャーとの間で、いま壮絶な暗闘が繰り広げられていることが漏れ伝わっている。とすれば、もしも人気に翳りが出てきたとしたら、事務所から真っ先に切り捨てられる運命は覚悟しておかなければならないだろう。稲垣吾郎の事件を、きわめて情緒的な友情物語で収束させてくれたのは、あくまでスマップが商売になっているからにすぎない。森且行がいない今、歌唱力でプロといえるのはキムタクぐらいだし、どんな形で独立していくかは、スマップに限らずこの事務所の、そして全ての芸能人の永遠の課題ではあるのだが。
で、春のゲツクは明石家さんまと組む絶好調の木村だが(しかしこの番組はこけまくった。今期のさんまと長澤まさみの番組ほどではないけれど)、ここしばらく木村の天下は続くだろう。同年代のキムタクファンは何故か認めたがらないが(「別に顔が好きってわけじゃないわよ。ルックスじゃないってば。」……保母をやっている高校の同級生は、亭主と子ども二人を家に残してコンサートに泊まりで出かけたりしている)、あの世間を小馬鹿にしたような美形は、三十代を目前にますます磨きがかかっているし、「夜空ノムコウ」でスガシカオ、「TV’s HIGH」で宮藤官九郎と組むスタッフの選択も的確だ。
ただひとつ、彼に不満があるとすれば、別に映画至上主義で言うわけではないが(芸能界のヒエラルキーでTV<映画という図式は既に崩れている)、代表作といえる映画がまだないことだ。王家衛(ウォン・カーウェイ~「恋する惑星」は見るべし。ウソコイとは次元の違うフェイ・ウォンが観れる)と組んだ「2046」は撮影が中断したままだし、このあたりで有能な作家と組んで、一発これだ!ってヤツを作ってくれないだろうか。まあ、これは最高の素材を囲い込めない日本映画界に問題があるんだろうが。
……その後「2046」はすったもんだがありつつも公開にこぎつけた。予想外に評判にならなかったけれど。そして去年、キムタクは「武士の一分」でホームランをかっとばし、「HERO」映画版でその強さを見せつけたわけだ。