事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

TV's High

2007-11-15 | テレビ番組

PARTⅡはこちら】Tvshigh

42歳の男がいきなりキムタクに目覚めたことに何か文句ある?PARTⅢ

 PARTⅡまでにお伝えしたように、コメディアンとしての才能バリバリにして、若手のくせに(それでも当時29歳になっている)受けの演技に卓越したところを見せる木村拓哉だが、彼にもそれなりのピンチはあった。言うまでもなく、その一つは工藤静香との結婚である。

 よりにもよって工藤静香だよ。どう考えてもヤンキーの選択。ファッションリーダーとして常に注目されるキムタクにとっては、深紫に縁取られたような(深い意味なし)ゾクのアイドルを妻にしたことって、ファンへの裏切りに近かろう。それでなくとも、長年付き合っていた女を切って捨てたことで反感をかったわけだし。

 加えて、スマップが実はジャニーズ事務所の中では決して本流ではなかったことも忘れてはならない(いや、別に忘れてもかまわないマニアねたですが)。冷静に彼らを眺めると、確かにヨゴレに近い存在ではある。

 ジャニーさんだのメリーさんだの一体何者だお前らは、と言いたくなるこの事務所は、現在長女が実権を握り始めているらしい。その彼女とスマップの女性マネージャーとの間で、いま壮絶な暗闘が繰り広げられていることが漏れ伝わっている。とすれば、もしも人気に翳りが出てきたとしたら、事務所から真っ先に切り捨てられる運命は覚悟しておかなければならないだろう。稲垣吾郎の事件を、きわめて情緒的な友情物語で収束させてくれたのは、あくまでスマップが商売になっているからにすぎない。森且行がいない今、歌唱力でプロといえるのはキムタクぐらいだし、どんな形で独立していくかは、スマップに限らずこの事務所の、そして全ての芸能人の永遠の課題ではあるのだが。

Kimutaku  で、春のゲツクは明石家さんまと組む絶好調の木村だが(しかしこの番組はこけまくった。今期のさんまと長澤まさみの番組ほどではないけれど)、ここしばらく木村の天下は続くだろう。同年代のキムタクファンは何故か認めたがらないが(「別に顔が好きってわけじゃないわよ。ルックスじゃないってば。」……保母をやっている高校の同級生は、亭主と子ども二人を家に残してコンサートに泊まりで出かけたりしている)、あの世間を小馬鹿にしたような美形は、三十代を目前にますます磨きがかかっているし、「夜空ノムコウ」でスガシカオ、「TV’s HIGH」で宮藤官九郎と組むスタッフの選択も的確だ。

 ただひとつ、彼に不満があるとすれば、別に映画至上主義で言うわけではないが(芸能界のヒエラルキーでTV<映画という図式は既に崩れている)、代表作といえる映画がまだないことだ。王家衛(ウォン・カーウェイ~「恋する惑星」は見るべし。ウソコイとは次元の違うフェイ・ウォンが観れる)と組んだ「2046」は撮影が中断したままだし、このあたりで有能な作家と組んで、一発これだ!ってヤツを作ってくれないだろうか。まあ、これは最高の素材を囲い込めない日本映画界に問題があるんだろうが。

……その後「2046」はすったもんだがありつつも公開にこぎつけた。予想外に評判にならなかったけれど。そして去年、キムタクは「武士の一分」でホームランをかっとばし、「HERO」映画版でその強さを見せつけたわけだ。

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「ギフト」フジテレビ1997.4.16~1997.6.25

2007-11-15 | テレビ番組

Takuya_kimura

PARTⅠはこちら】

飯田(NIGHT HEAD)譲治、井上(ひまわり)由美子脚本

42歳の男がいきなりキムタクに目覚めたことに何か文句ある?PARTⅡ

 で、キムタク。この男の凄いところは、共演者たちやスタッフを、いわゆる“キムタク流”ドラマに染め上げる力を持っていることだ。わかりやすく言うと、不自然なぐらいに自然な演技を強制する、というか……全然わかりやすくなってないな。

うーん、今期(当時)の月9のドラマ「人にやさしく」を例にとるといいかな。同じSMAP主演ドラマでも、こちらはセリフの8割が絶叫で出来上がっていることにお気づきだろうか。いや私は初回でいいかげん呆れてしまってもうほとんど見ていないのだが、視聴者を納得させるための最も安易な方法→全てをセリフで説明し、強調したいところは“音量”で勝負する、こんなパターンに終始しているのである。泣かせる場面なら、一拍置いて、せーので相手の胸ぐらをつかんで唾をとばしながらセリフを絶叫するわけね。

 これは、演出として安易だという以前に視聴者の怠慢を助長している。あ、今から泣かせる場面が始まるんだ、というシグナルをご丁寧に視聴者に提供しているのである。バラエティで、クドいぐらいに字幕を入れて、さあみなさんこれで笑ってくださいね、というパターンと一緒。「人に~」だけでなく、今のテレビってほとんどこんな視聴者への過剰なサービスに充ち満ちている。

 違うじゃん!と誰かの胸ぐらをつかんで私は絶叫したい。小一時間問いつめたいわけ。こんなことで日本のテレビドラマが進化するわけないだろ?と。

Smap  この「ギフト」。木村拓哉は記憶喪失の男、という設定もあるが、ほとんど反射神経だけで話しているかのように演じている。私流に言えば「脊髄でしゃべっている」かのように。相手の言葉にとまどいや反発がありながらも、とりあえず何らかのリアクションをちょっと示して見ました、ぐらいの。でも現実ってその通りじゃない?脚本家が考えに考えたセリフみたいなのって、恥ずかしくってちょっと話せないでしょう?みんなとりあえず“現実というドラマに参加するために気の乗らない発言を繰り返している”んじゃないのか?ひょっとしたら賛同されないかもしれないけれど、私ははっきりとそうです。

 で、そんな人間にとって、生活すること自体が面倒くさそうな木村の演技は、今のブラウン管の中では、そう、不自然なくらいに自然に見えるのである。そして彼のエライところは、先ほども書いたように、すべての出演者を、生活の面倒くささに辟易しているような演技に巻き込んでいることだ。このテの巻き込みはスターとしての特権だが、これだけの影響力のある役者は、知る限り共演者やスタッフを殴りまくった松田優作しか私は知らない。ギフトでいえば、拙劣きわまりない忌野清志郎(我が青春のRCサクセション)の演技が、あ、引きこもりならこんな感じだよな、と感じられるのも木村の気だるい突っ込みのせいだし、いつも何かしら過剰な角野卓造が、「HERO」では程良く気弱な上司を演じていたのも、私は木村のおかげだと思っている。

 そう、木村拓哉は、若いくせに、受けの演技が抜群にうまいのである。これは、コメディアンとして究極の才能だし、少なくともこの点で松田優作を彼が凌駕していることは確か……これが、今回の結論。ここまで持ってくるのになんでこんなに字数がいるのか、と怒らないで。次回は、この調子で工藤静香とジャニーズ事務所についてちょっと語ってみる。

※脚本の飯田譲治は、実は意外に上質なミステリー作家でもある。「ギフト」に関しては、井上由美子が書いた回の方が出来はいいが。その井上の代表作はNHKでやった「照柿」(原作高村薫)だ。野口五郎好演!

PARTⅢにつづく】

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