直前まで、違う映画を見るつもりでした。正直に言うと「スノーホワイト」の続篇(笑)。確かにシャーリーズ・セロンは魅力だけれど、しかし待て。くたびれた中年男が休日の朝に独りで白雪姫ってのはどうなの?と冷静になって路線変更。
「幻の光」「ワンダフルライフ」「奇跡」「誰も知らない」そしてあの傑作「空気人形」を撮った是枝裕和の新作なのだから、さっそく飛びついてもよさそうなものなのに、どうも気が重かったんですよ。
妻(真木よう子)との離婚が成立しているのに未練たらたら、養育費も払えないのに息子にはいい格好をするダメ親父(阿部寛)……くたびれた中年にとって、あまりにも他人事じゃなさすぎて。
「歩いても 歩いても」がいしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」の歌詞からタイトルがとられていたように、この作品はテレサ・テンの「別れの予感」からいただいていて、だけでなくキャスト(阿部、樹木希林が母子)、肌合いもふくめて「歩いても 歩いてもPART2」と言ってさしつかえない。
「しあわせってのはね、何かをあきらめないと手にできないもんなのよ」
「誰かの過去になる勇気をもつのが、大人になるってことじゃないか」
「海よりも深く人を愛したことなんかないわ」
とにかくみんな名言吐きまくり。だからこそちょっと息苦しくもある。樹木希林と阿部寛はうますぎるし。
そこを救っているのは主人公が興信所の職員であること。私立探偵らしく、出がらしのコーヒーをまた入れるあたり、「動く標的」のポール・ニューマンそのまんま。
くわえて、ダメな先輩に呆れながらも、同時に尊敬もしているらしい後輩を演じた池松壮亮がとにかく気持ちいい!「ぼくたちの家族」にしてもそうだったが、名優たちに囲まれると、なおチカラを発揮するタイプみたいだ。末恐ろしいな。
草野球で、ホームランよりもフォアボールで出塁したいと願う渋い息子が愛おしい。是枝映画において、子役と編集がすばらしい伝統は、めでたく今回も守られました。PART3希望。タイトルは「空よりもまだ青く」で。
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