事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ぼくらが子役だったとき」 中山千夏著 金曜日刊

2008-11-19 | 芸能ネタ

Izumi_1  あなたが小学生だったとして、同じクラスに子役がいたらどう感じるだろう。彼(彼女)は人気タレントと共演し、あこがれの“テレビのなか”にいるのだ。率直にうらやむか、あるいは妬ましさのあまりいじめに走るだろうか。少なくともまわりが過剰に意識することは確実。

 ひるがえって今度はその子役の立場になってみよう。その過剰な意識を受けとめることは、芸能人としての幸福でもあるだろう。でも、子どものころからそれが通常となった場合、成長につれて子役の心はどう変貌するか。まして、子役は確実に大人になってしまうのだ。その壁を意識しつつ彼(彼女)は生きていく。“余生”はあまりにも長い……。

 自らも天才子役だった中山千夏が、松島トモ子や水谷豊など子役出身者14名との対談をまとめたのがこの書。いやー面白かった。母親との葛藤、周囲との軋轢、否応なしにオトナになってしまう心……子役という存在をめぐる対談が、すぐれて教育論になっているあたりは市民運動家でもある中山の罠でしょう(笑)。掲載誌も「週刊金曜日」だし。

 弘田三枝子は周囲の嫉妬から不登校になり、小林幸子は一家の生計をひとりで背負い、和泉雅子(少女時代があまりにも美少女なのにびっくり)は四十才になるまで時間もお金も母親の管理下にあった(だからってなにも北極まで行かなくても)。風間杜夫のように自分をコントロールし、名優にのぼりつめるのは希有な例だ(脇目もふらずに突っ走った美空ひばりという怪物もいますけどね)。しかし子役たちに大人になっても芸能界で成功しろと強要するのは酷な話ではないか。四方晴美(チャコちゃんです)のように、マクドナルドで働きながらシングルマザーとして子どもたちを育てているのだって“成功”ではないか。

490660546x 問題は、この書に出てこなかった子役たちの方だ。肥大した自意識のまま社会に出て、王や女王のようにふるまってきた子役時代の常識が通用しないことで転落していく事例は後を絶たない。西川和孝(大五郎です)のように殺人罪で服役中なのは特別だとしても、家庭が崩壊した宮脇康之(ケンちゃんです)や薬で自滅したマコーレー・カルキン(ホームアローンね)の悲劇は、子役のしんどさを代表している。その最たる例がマイケル・ジャクソンなのかもしれないが。

もっとも、中山千夏から依頼をうけても「ギャラが折り合わなかったから」と対談を断ってきた某女優のケースは、そのしたたかさがむしろすがすがしい。どう考えても杉田かおるなんだろうけど(^o^)。

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