事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

マクドナルド物語第1回

2007-07-12 | 食・レシピ

Mcdonalds_05  吉野家に続いて、ファーストフードの一方の雄、マクドナルドについても語ってみよう。ただし二十年以上前の、マック黎明期のお話なので、バリューセットだのハンバーガー平日65円(!)だのといった現在とはおそらく大きく隔たった印象を持たれるかもしれない。今は一人の父親として、休日に子どもを連れて訪れるあの場所に、貧乏な学生時分に時給を求めて通ったあの頃の、つまりは昔話である。

 小田急線千歳船橋駅、といえば高級住宅街として有名な成城学園から各駅で二駅しか離れていないのだが、高級、というイメージは一気に薄れてしまう。とんねるずの木梨の実家の自転車屋が近くにある、と聞けばある程度輪郭はつかんでもらえるだろうか。友人がそこに住んでいたので、私はよく狛江のアパートから各駅で遊びに行っていた。

 ある晩、その友人宅に向かう途中、後ろからオーバーオールを着た小男が「堀ぃ!」と声をかけてきた。

「なんだ、Iか。」高校時代の同級生だ。
「なんだじゃないだろうが。お前、バイトしないか?」
「バイト?」
「うん、マクドナルド。ここの駅前の。」
「なんでお前がそんなアルバイトニュースみたいなことするんだよ。」
「いや実はさぁ、今は俺がやってるんだけど、もう辞めたくてな。」
「安いのか、時給。」
620円。」
「悪くないじゃん。」当時としてはかなりいい方だ。私が他にやったバイトに比べれば段違いに高い。

「あのな、別にカウンターの奥でポテト揚げたりするんじゃないんだよ。」
「あん?」
「夜の10時から朝の7時まで、徹夜で掃除したり機械の様子みたりするんだ。メンテ(メンテナンス、の略だろう)っていうんだけどな。」
「深夜勤で620円かぁ。つらいなぁ。」
「うん、眠いし。」それで辞めたくなったわけだ。
「うーん、今はバイトやってないからなあ。」そろそろ財布も寂しくなってきていた。
「ちょっと、行ってみないか。」
「今?」
「うん、おごるぜ、ハンバーガー。」

……小男に引きずられるようにしてマック(内部の人間はめったにマクドナルドとは呼ばない)千歳船橋店へ。今も変わらぬMのマークは、まさしく、駅前にある。徒歩30秒。閉店が近く、割合にすいている。

「山口さん呼んでくれる?」カウンターの女の子にIが声をかけると、奥から眼鏡をかけた三十がらみの小太りの男が出てくる。

「何?」
「あ・マネージャー、こいつ、俺の高校の同級生なんですけど、メンテやるっていうから。」やる、とは言ってないぞ。
「ああ、君の代わりってわけだ。」
「そうですそうです。」低姿勢なこいつの声で、辞めるんなら代わりを見つけて来い、と言ったのがこの男であること、ついでにこれまでのIの勤務態度まで透けて見える。

「じゃあ、ちょっと面接しようか。」

……続きは週明けに

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