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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ものがたりの賊(やから)」真藤順丈著 文藝春秋

2022-04-12 | 本と雑誌

短編集なのかと思っていた。最初の章に出てくる主人公が電車の技士で、世話になったばあさんを菩提寺に弔っているあたりの描写で、あ、これ「坊っちゃん」じゃないかと気づく(もちろん彼の名は最後まで出てこない)。いくらなんでもこのパターンで長篇にはできないだろう?ところが……彼のまわりに登場するのは

竹取の翁……『竹取物語』より。一党のリーダー。特技:自らの血を輸血し、不老の力を授ける

六条院………『源氏物語』より。貴族。「光源氏」とも。特技(?):女たらし

聖……………『高野聖』より。山奥の妖婦。特技:色仕掛け。触れるものの傷を癒す

薫……………『伊豆の踊子』より。踊子。特技:清純無垢 

李徴…………『山月記』より。中国の元官吏。特技:虎になること

机龍之助……『大菩薩峠』より。剣客。特技:脊髄反射のごとく人を殺める

坊っちゃん…『坊っちゃん』より。元教師。特技:なし(←ダイジョブ?)

【文春BOOKS】より

他にも、遠藤平吉いう、名前だけでは誰だかわからないけれどもおなじみの人物が登場し、物語にからむ。それぞれ、巻末に長大な注釈がついているので、読んだことのない古典でも読んだ気になれます(笑)。

これだけのメンバーを用意して、それぞれのオリジナルのエピソードを利用し、描かれるのは伝奇小説。面白くならないわけがない。まあ、成立させるのは至難の業だったはずだけど、「宝島」であれほど興奮させてくれた真藤のことなので、今回も圧倒的に読ませてくれます。

日本文学のアベンジャーズ、というコピーには笑った。いやー坊っちゃんはやっぱり泣かせる。

コメント
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