PART6はこちら。
ガイジンの眼から見た大阪が描写される。デコトラ、華麗な市電。確かに、美しい。
大阪府警では当然この二人は「犯人を逃がしたドジなヤンキー」という扱い。ふてるニックとチャーリー。デカ部屋では、いかにも日本の刑事といった風情の中年男が蕎麦をすすっている。
「ったく、英語を話せるヤツはいないのか」
と愚痴る二人に、先ほどの蕎麦の男が
「大阪府警の松本です」
と英語で告げる。驚くふたり。演じているのは高倉健。華麗な松田優作の登場と違い、いかにも渋い現れ方なのが対称的。「人間の証明」において、キャスティングをキャンセルされたのは健さんです。
岡田茉莉子との年齢差などを考えれば、どう考えても健さんの方が適役だったにもかかわらず、若くてむちゃくちゃなヤツを選んだ角川春樹は、それはそれで慧眼だったわけだけれども。春樹は次作「野性の証明」で健さんをちゃんと主役にもってきてフォローはしています。
お偉いさん登場。神山繁。彼はいかにも「背広野郎」である。
「このだらしのない男たちを見たまえ。これがアメリカ流だ」
と吐き捨てる。いかにもキャリアらしい発言ですね。そして、この作品において神山繁はとてもいい味を出しているのだ。わかってくれたかなあガイジン観客たちは。で、実は彼も英語が話せる。考えてみればキャリアなんだから当然の話ではあるんですが。
ここで、日米の警察の決定的な違いが出現。アメリカ人たちは拳銃を取り上げられるのである。驚愕する二人。これが、後半で大きな意味を持つ。
拳銃を持たない警察官という、およそアメリカでは考えられない状況で彼らは捜査することになる。「ブラック・レイン」という娯楽作品が持つ意味はここで大きい。以下次号。