「霧の旗」「砂の器」「八つ墓村」「チャイナタウン」「氷の微笑」「ゼロの焦点」につづいて「ブラック・レイン」を“わからない”シリーズの新作としてお届けします。
これ、びっくりするくらい人気企画なんですよ。ブログでもこのシリーズが、古畑任三郎と刑事コロンボの“全部観る”シリーズに次いでヒット数が多いの。
で、なぜ「ブラック・レイン」なのかというと、久しぶりに観たら本当に傑作だったことに驚いたから。アメリカの刑事が日本にやってきて、ある人物と死闘を繰り広げ、同時に日本の刑事と心が通じ合う……という展開だから、おそらくは日本人がいちばん楽しめたこととは思う。あるいは、ふざけんじゃねーと激昂したか。
欧米人が描く日本人って、とにかく変だったじゃないですか。さすがにメガネをかけてカメラを首から下げ、ペコペコとお辞儀をくりかえすってステロタイプな日本人は見かけなくなったけれども。
おそらくは「ダイハード」あたりからちゃんとしてきたというのが持論です。ナカトミビルにおけるジョン・マクレーンの孤高の闘いは、日本の企業においてアメリカ人女性がキャリアアップするために夫(マクレーン)の存在を隠していたことがうまく使われていたからね。
円高の影響もあって、日本を市場としてハリウッドが強く意識していたのはこの「ブラック・レイン」も「ダイハード」もいっしょ。近年、中国がその地位を完全に奪い、商売人として敏感なトム・クルーズが、ミッション・インポッシブルにおいて中国を舞台にしていたのがその代表。それは仕方のないことでしょ。なにしろ人口が違いすぎるんだから。「カンフー・パンダ」の新作は、本国よりも中国の方が興行収入が大きいとか。そこまで来たかあ。
まあそれはともかく、ブラック・レインにおいては、これまでとまったく違う日本が描かれていたのは確か。日本人が見ても、これのどこが日本なんだと驚く画面の連続。それは、あまりに珍妙だからではなく、あまりに美しかったからなのだ。以下次号。