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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「作家的時評集2008-2013」 高村薫著 毎日新聞社

2014-11-10 | 社会・経済

あの高村薫が、あの救いのない筆致で(笑)各紙に寄せた政治的発言の数々。彼女の近年の作品が、苦く(前から苦かったですが)、重々しい(前から重厚でしたけれども)のは、2008年から2013年までの日本が、いかに苦く救いのないものだったかを象徴している。

ほんとうに、ひどい時代だったと総括されるだろう。追いつめられた自民党のあがきと諦念。政権交代後の民主党の拙劣な政権運営。リーマンショック、震災と原発、妙に口当たりだけはいいことしか言わない安倍政権誕生……

高村の立ち位置はぶれない。

特に、経済の面では改革は必至であり、原発をめぐる現状に警鐘を鳴らし続けている。とりわけ中日新聞における原発批判は読みごたえがある。
阪神大震災を経験した人間だからこそ、東北の痛みを実は本気で感得できているわけではないという吐露も正直だ。そうなんだろうなあと思いますもの。

国を憂うという意味で、嫌韓嫌中を声高に語れば足りるとする軽薄な評論家が多いなかで、関西に暮らすこの女性作家こそ、真に国を憂えている。絶望的な状況のなかで、愚直に生きる合田の姿がここにかぶる。彼女がやりたかったことは、ミステリでも小説でもなくて、実はこれなのだと思い知らされる。

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