【原作伊坂幸太郎】のなにがすばらしいかと言うと、この「フィッシュストーリー」のような映画は、これまで日本に存在しえなかったということなのだ。
1975年から2012年にいたるいくつかのエピソードの連関は、世界には正義が存在する、自分の信じることをやっていれば必ず報われるという、一種の壮大なほら話を成している。ほら話って、日本映画のいちばん苦手な部分。あ、ちなみにわたし、英文卒なのにfish storyがほら話を意味するって知りませんでした(T_T)。
2012 年、彗星の地球への衝突が5時間後に迫り世界が終わろうとする中、ターンテーブルから日本のパンクバンド“逆鱗”が1975年にセックス・ピストルズのデビューに先駆けて放った最後のレコード「FISH STORY」が流れる。1982年、その曲を聴いた気弱な大学生は、いつか世界を救うと予言され、2009年、正義の味方になりたかったコックと共にシージャックに巻き込まれた女子高生の未来は…。
……意味わかんないでしょ。でも、世界滅亡というでかい危機を、パンクバンドの音楽が結果的に救うというきわどい話(観客が応援してくれるかはリスキー)を成立させたのは、なにより伊坂幸太郎がベストセラー作家になっているという事実。そして映画は音楽そのものを描くことが出来るじゃないかという作り手の自信。斎藤和義プロデュースの「フィッシュストーリー」はほんとうにいい曲なのでうれしい。
もはや伊坂幸太郎原作+中村義洋監督のレギュラーとなった濱田岳が気弱な学生。
バンドのメンバーをちびノリダー伊藤淳史、高良健吾。
二代にわたってバンドにかかわる男に大森南朋。
バンドにのめりこむホステスに江口のりこ。
みんないいです。特に、ある重要な役割を演ずることになる女子高生を演じた多部未華子がキュート。デカワンコははやくDVDになんないっすか。
さあ今度は名探偵にして怪盗という、伊坂原作でいちばん好きな黒澤役を堺雅人がやってる「ラッシュライフ」を借りなくちゃ!