事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

港座通信~汚名

2009-06-07 | 港座

Notoriousalfredhitchcock 「麦秋」はこちら

「汚名」Notorious(1946 米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:イングリッド・バーグマン ケーリー・グラント

サスペンス、ロマンス、ユーモアの三拍子そろったヒッチコックの代表作のひとつ。公開当時、3秒以上のキスシーンは検閲で認められなかったため、3秒以内のキスを何度もくりかえさせ、結果的に史上最も長いラブシーンになったことでも知られています。ひねくれ者のヒッチコックらしい話です。

※ひさしぶりにトリュフォーがヒッチコックにインタビューした名著「映画術」(晶文社)を読み返してみる。
「汚名」はトリュフォーが大好きな作品のようで……

トリュフォー:実は早くこの映画についてお話をうかがいたくてうずうずしていたのです。なんといっても「汚名」はわたしにとって最高のヒッチコック映画ですし、すくなくとも、あなたの白黒映画ではわたしのいちばん好きな作品なのです。まちがいなくヒッチコック映画の真髄と言っていい作品だとわたしは確信しています。
(略)

ヒッチコック:単純明快であることこそ、わたしたちがめざしたものだ。ふつう、スパイ映画といえば、暴力やアクションがたっぷりあるというのがおきまりだが、そういったものをすべてこの映画では排除することにした。殺人の手口にしても、新聞の三面記事に出てくるような、ごく日常的な、ありきたりの、単純なやりかたを描いた。クロード・レインズと母親は、イングリッド・バーグマンがアメリカのスパイであることがわかったとき、真日コーヒーに毒薬を少しずつまぜて飲ませ、さりげなく彼女を毒殺しようとする。たとえば、ひそかに妻をかたづけさせようとするときなど、だれもが考えそうな方法だろう?

トリュフォー:この作品の成功のカギのひとつは、完璧と言っていい配役のすばらしさだと思うのです。ケイリー・グラント、イングリッド・バーグマン、クロード・レインズ、それにレオポルディン・コンスタンティンはまったくすばらしいの一語につきます。
(略)
クロード・レインズが小男であること、長身のイングリッド・バーグマンよりもずっと背が低い男であることもまた、重要な心理的ファクターになっているのではないでしょうか。自分よりもずっと背の高い女に恋をする小さな男というのは、それだけですでに感動的です。

ヒッチコック:そう、クロード・レインズとイングリッド・バーグマンはすばらしいカップルだったと思う、ただ、クローズアップでふたりの顔をいっしょに撮る場合には、ふたりの背があまりにも違いすぎるので、クロード・レインズには高い台にのってもらわないとだめだったよ。

……北欧系の長身の美女にあこがれる短躯の男。これってヒッチコック自身のことじゃないか。トリュフォーはわかっていてきいたのだろうか。インタビュイーとインタビュアー双方がくせ者だからなあ。

次回はいよいよ「犬神家の一族」です。

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港座通信~麦秋

2009-06-07 | 港座

Bakushu02 「素晴らしき哉、人生!」特集はこちら

「麦秋」(1951 松竹)
監督:小津安二郎 出演:原節子 菅井一郎 笠智衆 東山千栄子

邦画封切館だった港座ですので、小津の映画はぜひやりたい、と「台町と映画を愉しむ会」のメンバーは話し合っていました。「東京物語」「晩春」「お茶漬けの味」など、あふれるほどの傑作を撮った小津のどれをチョイスするかで……もめたりはしませんでした。プッシュしたメンバーがいずれも「麦秋(ばくしゅう)」を推したからです。

老夫婦がしみじみと「今がいちばんいいときかもしれないねぇ」と会話するシーンの哀切さは胸に迫ります。原節子、三宅邦子、淡島千景の美しさは比類がありません。小津は女優を美しく撮る名人でもあったわけです。ぜひ。

※「麦秋」が小津のベストであるとの思いはゆるがない。この雰囲気をドラえもんのスタッフは「のび太の結婚前夜」に露骨に引用したわけだ。あちらも傑作なのでぜひ。

※上映会には、「麦秋」目当てにウチの奥さんのお母さんが来てくれるそうです(笑)。

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次回はヒッチコックの「汚名

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港座通信~素晴らしき哉、人生!

2009-06-07 | 港座

Wonderful_life_jpg 「十二人の怒れる男」特集はこちら

「素晴らしき哉、人生!」It's a Wonderful Life(1946 米)
監督:フランク・キャプラ 出演:ジェームズ・スチュワート ドナ・リード

クリスマスの晩に自殺を図ろうとしたジョージに、翼をまだ持っていない二級天使が翼を得るために彼を助ける使命を受け現れる。天使は「生まれて来なければよかった」と言う彼のため、特別に彼が生まれて来なかった場合の世の中を見せる。そして彼がいかに素晴らしい人生を送ってきたかを理解させようとする……

ちょっとオーバーですが、アメリカ人が年に一回、クリスマスに必ず観る作品です。人生は捨てたものではない、人間の善意を信じよう……確かに、年に一度は観たくなります。聖夜に奇跡はつきものですし。

※キャプラの作品では「或る夜の出来事」(クローデッド・コルベールがかわいい!)とどちらを選ぶかでちょっと迷うところ。「ローマの休日」の元ネタだしね。

愛と善意の人、とだけキャプラをとらえるのは大間違いで「毒薬と老嬢」のようなブラックさと表裏一体であるあたりが妙味か。

次回は小津安二郎の「麦秋」です。

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