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「汚名」Notorious(1946 米)
監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:イングリッド・バーグマン ケーリー・グラント
サスペンス、ロマンス、ユーモアの三拍子そろったヒッチコックの代表作のひとつ。公開当時、3秒以上のキスシーンは検閲で認められなかったため、3秒以内のキスを何度もくりかえさせ、結果的に史上最も長いラブシーンになったことでも知られています。ひねくれ者のヒッチコックらしい話です。
※ひさしぶりにトリュフォーがヒッチコックにインタビューした名著「映画術」(晶文社)を読み返してみる。
「汚名」はトリュフォーが大好きな作品のようで……
トリュフォー:実は早くこの映画についてお話をうかがいたくてうずうずしていたのです。なんといっても「汚名」はわたしにとって最高のヒッチコック映画ですし、すくなくとも、あなたの白黒映画ではわたしのいちばん好きな作品なのです。まちがいなくヒッチコック映画の真髄と言っていい作品だとわたしは確信しています。
(略)
ヒッチコック:単純明快であることこそ、わたしたちがめざしたものだ。ふつう、スパイ映画といえば、暴力やアクションがたっぷりあるというのがおきまりだが、そういったものをすべてこの映画では排除することにした。殺人の手口にしても、新聞の三面記事に出てくるような、ごく日常的な、ありきたりの、単純なやりかたを描いた。クロード・レインズと母親は、イングリッド・バーグマンがアメリカのスパイであることがわかったとき、真日コーヒーに毒薬を少しずつまぜて飲ませ、さりげなく彼女を毒殺しようとする。たとえば、ひそかに妻をかたづけさせようとするときなど、だれもが考えそうな方法だろう?
トリュフォー:この作品の成功のカギのひとつは、完璧と言っていい配役のすばらしさだと思うのです。ケイリー・グラント、イングリッド・バーグマン、クロード・レインズ、それにレオポルディン・コンスタンティンはまったくすばらしいの一語につきます。
(略)
クロード・レインズが小男であること、長身のイングリッド・バーグマンよりもずっと背が低い男であることもまた、重要な心理的ファクターになっているのではないでしょうか。自分よりもずっと背の高い女に恋をする小さな男というのは、それだけですでに感動的です。
ヒッチコック:そう、クロード・レインズとイングリッド・バーグマンはすばらしいカップルだったと思う、ただ、クローズアップでふたりの顔をいっしょに撮る場合には、ふたりの背があまりにも違いすぎるので、クロード・レインズには高い台にのってもらわないとだめだったよ。
……北欧系の長身の美女にあこがれる短躯の男。これってヒッチコック自身のことじゃないか。トリュフォーはわかっていてきいたのだろうか。インタビュイーとインタビュアー双方がくせ者だからなあ。
次回はいよいよ「犬神家の一族」です。
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