陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

トマス・ハーディ「アリシアの日記」その23.

2010-06-25 22:19:35 | 翻訳


四月二十五日

 わたしたちは家に到着し、シャルルさんも一緒にいらっしゃった。さまざまな出来事がいまや静かだがおそろしいスピードで推移していく。実際、その流れに乗っていくことが、こんなはずがない、と思うほどに簡単なことに、ときにとまどってしまうほどだ。

シャルルさんは近くの町に泊まっておられる。結婚の許可証が出るのを待っているるだけだ。許可が出たらこちらへいらっしゃって、内々で式を挙げ、妹を連れて帰国されることになるだろう。お顔には、もうずっと、満足ではなく、諦観の表情が浮かんだままだ。だが、あの懸案事項に関しては、あれ以上ひと言もおっしゃらないし、こうすると決めたことからは髪の毛一筋も変更しようとはなさらない。時期が来れば、ふたりは幸せになるだろう。そうあってほしいものだ。それでも、わたしは気持ちがふさぐのを、どうすることもできない。


五月六日

 結婚式前夜。キャロラインははしゃぎまわっているわけではないが、ほんとうに幸せそうだ。けれども、あの子に関するかぎりは、なにひとつ心配するようなことはない。あの方もそうだ、と言えたら、どれほど良かったか。シャルルさんはまるで幽霊のように歩き回っておられるだけだ。なのに、だれもあの方のものごしがおかしいことに気がつかないらしい。わたしは式のためにここにいなければならない。わたしがいなければ、あの方もこれほど落ち着かない気持ちになることはなかっただろうに。とはいえ、原因をあれこれとつつきまわすのは、良いことではあるまい。父ときたら単純に、シャルルさんとあの子なら、世間の人のような幸せなカップルになれるだろう、と行っている。ともかく、明日になればすべておさまるのだ。


五月七日

 ふたりは結婚した。いましがた、わたしたちは教会から戻ってきた。今朝方、シャルルさんの顔があまりに青ざめているので、父が、体の具合でも悪いのかね、と尋ねたところ、「いいえ、少し頭が痛いだけです」とおっしゃった。だからわたしたちは教会へ行ったのだ。いささかの差し障りもなく、式は終わった。

午後四時

 ふたりはもう新婚旅行に出発しなければならない時間だ。なのに、なぜか遅れている。シャルルさんは三十分ほど前にお出かけになったのだが、まだ戻っていらっしゃらないのだ。キャロラインは玄関ホールでずっと待っている。汽車に乗り遅れるのではないかと、わたしは心配でたまらない。何かあったとしても、きっとたいしたことではないのだろう。なのに、悪い予感がしてたまらないのだ……。



(※次回、衝撃の?最終回)




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