陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

シャーリー・ジャクスン 「くじ」を語る その4.

2010-10-18 23:00:59 | 翻訳
その4.


【ニューヨーク】 こうした信じがたい儀式が、中西部のいくつかの州では行われているのでしょうか。いったいいつぐらいから始まったもので、その目的は何なのでしょう。

【ネヴァダ】 この作品はフィクションだとは思いますが、もしかして事実に基づいてるなんてことがあるんでしょうか。

【メリーランド】 ここに出てくる風習が実際に存在するかどうか、教えてください。

【ニューヨーク】 どうかわたしの好奇心に答えを与えてやってください。このような儀式が未だに行われているかどうか、行われているのなら、その場所について。

【カリフォルニア】 これが事実に基づいているのなら、由来となった出来事が発生した日時と場所を教えていただけませんか。

【テキサス】 合衆国のどの地方で、このような組織的かつ合法的な、明らかにリンチと見なされる行為がなされたのか、さしつかえなければ教えていただきたい。ニューイングランドや同程度に開けた土地において、このような集団的サディズムの発露が、平均的市民の生活のかなめになっていることが、はたしてあるのだろうか。

【ジョージア】 お時間がありましたら、この作品で描かれた奇妙な風習について、どうかもっと詳しく教えてください。

【ブルックリン N.Y.】 この作品のもとになった出来事や言い伝えに関する特定の資料、もしくは典拠があるのなら、勉強してみたいと考えています。この作品を読んで、合衆国の儀式やくじに関して自分が何の知識も持っていないことがわかって、刺激を受けました。

【カリフォルニア】 もしほんとうに起こったことなら、記録が残っているはずです。

【ニューヨーク】 こんな話は『事件の真相』誌でも読んだことがない。

【ニューヨーク】 これは実際に起こったことにもとづいているのですか? 豊作を祈願して、人間を生け贄にするようなならわしが、英国の田舎ではまだ続いているのですか。恐ろしい思想ですね。

【オハイオ】 この作品は事実にもとづいているのだと思います。そうではありませんか? 精神分析医として、わたしはこの時代錯誤的儀式のもつ精神力学的可能性について、興味をそそられました。

【ミシシッピ】 この作品は、わたしがまったく知らなかった風習のことを書かれていたように思います。

【カリフォルニア】 かなり前、こんな風習がフランスのある地方で、ある時代に行われていたと読んだ記憶があります。けれども、これがこの合衆国でも実施されていたとは、聞いたことがありませんでした。このような情報をどのようにして得られたのでしょうか。また、この種のことが、現代においても行われているかどうか、教えていただけないでしょうか。

【ペンシルバニア】 いまも続いている習慣を描かれたのですか。

【ニューヨーク】 豊穣祈願のために人身御供を捧げるところがニューイングランドにはいまなお存在しているのですか。

【ボストン】 この話は明らかにイギリスのならわし、もしくは伝統であって、我が国は一切関知しないものである。

【カナダ】 このくじ引きは、合衆国で未だに受け継がれている、おそらくは中世あたりに端を発する野蛮な行事と考えてかまいませんか。国内のどこで行われているのでしょうか。

【ロスアンゼルス】  これまで奇妙なカルト的集団についても読んできたが、この作品には当惑させられた。

【テキサス】 このグループは、おそらくイギリスから来た初期入植者の末裔ではないでしょうか。彼らはドルイド教の豊作祈願の儀式を受け継いでいるのではありませんか。

【ケベック】 これはアメリカのどこかでいまなお行われている習慣なんですか。

【ロンドン在住 心理学者】 私は英国の友人や患者たちから説明を求められています。合衆国では野蛮な石打ちの刑がいまなお存続しているのか、この作品全体として、いったい何を言おうとしているのか、さらに、どこでこの事件が起こったか、知りたがっています。

【オレゴン】 合衆国のどこかには、わたしたち極西部に住む者の知らない魔女の業の名残りが未だ存在するのでしょうか。

【インド マドラス】 この作品が事実にもとづくものなのかどうか、もしそうなら、この中で描かれているように、ある家族をくじ引きによって選びだし、ほかの村人が石打ちの刑を執行するという風習が、合衆国のどこかにいまなお残っているのかどうか、知りたいと思います、『ニューヨーカー』は我が国でも、私共の勤務しておりますUSIS図書館にて読まれており、未だこの作品についての問い合わせはないものの、そのことは起こりうる事態として想定されます。回答できるように準備をしておきたいと考えております。



(この項つづく)