陰陽師的日常

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陰陽師的2008年占い

2007-12-31 22:42:18 | weblog

陰陽師的2008年占い

(注:以下の占いは陰陽道に基づかない占いである。
一応星占いの分類に従っているが、かといって星占いに基づいているわけでもない。その分類が広く行き渡っており便利なので、それを使わせてもらっただけである。)



【牡羊座】2008年のキーワード:ほんとうの勝者は深入りしなかった者である

一見そう見えなくても、心の中では負けず嫌いなあなたは、人から的はずれの批判をぶつけられたり、バカにされたりすると、悔しくてたまりません。なんとかして相手をへこませたい、ぎゃふんと言わせたい(本当に「ぎゃふん」と言った日本人をわたしは知らないのですが、この「ぎゃふん」とは日本語ではないのでしょうか?)、できるものなら「ごめんなさい、そう言ったわたしが間違っていました」と言わせたいと思って、眠れない夜を過ごしたりしてしまいます。でも、そういうときはスティーヴン・キングの言葉を思いだしてください。
「ウンコ投げ競争の勝者は、手の一番きれいな者である」
相手の弱点を同じように言い返したところで、気が晴れるのはほんの一瞬、つぎにはもっときつい言葉が待っています。いま、この時点でたとえ相手に「負け」を認めさせることができなくても、その勝負に勝つことはできます。あなたがそこから離れてしまえば良いのです。

【牡牛座】2008年のキーワード:望むものを得るためには、まず何を望んでいるかを決めなければならない

我慢強いあなたは、自分の望むことを口に出すことは、わがままだし子供っぽいことだと考えて、ついそれを呑み込んでしまいます。
確かに、あれがほしい、これがほしい、と思う端から言うことが許されるのは、せいぜい二歳が限度、おとなになってもそれをやる人は、幼いのではなく、単に力の感覚を楽しんでいるだけです。
でも、ほんとうに望みは口に出してはならないなのでしょうか。恋愛ドラマで、暗にほのめかして裏工作をするのは嫌われ者の敵役と相場は決まっているし、ほしいものも手に入れず、我慢ばかりしている人は、マンガでは暗い顔の三白眼、縦線を背負って登場します。
あなただってほしがってもいいのです。ただ、二歳でも、ヴェルサイユ宮を追われる前のマリー=アントワネットでもないあなたは、要求の声をあげる前に、自分が何を望み、何を求めているかを知らなくてはなりません。そうして、それを知るということは、同時に自分自身を知るということでもあるのです。

【双子座】2008年のキーワード:人の行動を予測することには意味はない

とてもカンのいいあなたは、親しい相手なら、つぎに何を言うか、何をするか、おおよそ見当がついている、と思っています。
あなたが部屋に入っていくと、急に席を立って出ていく人がいた。とっさにあなたは彼、もしくは彼女とのこれまでのいきさつを頭の中で巻き戻し、その原因を探ります。いったい何に腹を立てたのか、何が原因で気分を害したのか。思い当たる出来事が見つかると、今度は頭の中でその再現ドラマが始まります。相手の言い分、自分の言い分、周囲の状況を考え合わせ、あなたは心の中で自分を弁護し、相手に批判を始めます。すると、当の相手が、さわやかな顔で、ハンカチで手をふきながら戻ってきた……。あなたが入っていったこととは何の関係もなかったのです。
ユリ・ゲラーさんならそういうことはないかもしれませんが、あなたの超能力はそれほどたいしたものではありません。多くの場合、相手の表情や態度と、自分の恐れを結びつけているだけなのです。あるいは、調子のいい期待と。
相手があなたの目の前で、持っていた雑誌をいらだたしげに床にたたきつけたとしても、動じる必要はありません。冷静に聞きましょう。「どうしたの?」
ぺちゃんこになったゴキブリを見たくなければ黙っていてもかまいませんが。

【蟹座】2008年のキーワード:とびきり楽しい自分の話は、聞かされる人には退屈なものである。

うれしくてうれしくて、どうしても誰かれの見境なく人に話さずにはおれないような出来事が、ときどきわたしたちには起こります。あなたにも、昇進・昇級した、自分の苦労してやった仕事が認められた、ずっと会いたいと思っていた人から電話をもらった、大金の入った財布を拾った……、などという「とびきりの出来事」が起こるかもしれません。
けれど、自分にとってうれしければうれしいほど、聞かされる相手には何の関係もない話でもあるのです。ああそれはよかったね、と聞いてくれるのは、単にその人が親切だからに過ぎません。その人だって、二度目は内心「またその話かよ」と思っているでしょう。
だから、とびきりうれしい出来事は、夜中に札を数える守銭奴のごとく、ひっそりと自分だけで思い返して、心ゆくまで反芻しましょう。いくら夜中ににたにた笑って不気味だろうが、見ている人がいなければそれでいいのです。
おっと、大金の入った財布はちゃんと届けましょう。少なくとも一割のお礼は返ってくるのですから。

【獅子座】2008年のキーワード:うぬぼれることは楽しい

ステキなあなたは、鏡の前で角度をつけながら、おれ、結構おっとこまえやん、と思ったり、自分の答案を見て、自分はなんて頭がいいんだろう、ひょっとして天才ちゃうか~、と思り、作った書類を見返して、これだけのことができるやつはほかにはおらんな、と思ったりします(ときどき、あるいは頻繁に、という個人差はあるでしょうが)。つぎの瞬間、これはうぬぼれだ、はっと気がついて、いかんいかん、とあわててうち消そうとするのですが、でも、うぬぼれたっていいんです。それは楽しいひとときだし、そういう楽しみを持てるということは幸福なことでもあります。そういう心の弾みをばねにして、わたしたちは苦労の多い仕事や勉強をこれから先も続けていくことができるのですから。
だから、人のそれにも寛容になろうではありませんか。人前でうぬぼれている人を見るのは、実際には不快なものだし、その高くなった天狗の鼻をへし折ってやりたい気分にもかられたりするのですが、そういう人は、また、あなたにこんなうぬぼれをもたらしてくれるのです。
自分はたとえそういうことを思ったにせよ、自分の腹の中に納めておけるほどの人間だぞ。

【乙女座】2008年のキーワード:自分の真価を作り上げるには時間がかかる

がんばっているあなたですが、ときどき、こういうことに何の意味があるのだろう、とか、どうしてだれも認めてくれないのだろう、などという疑念が、疲れたとき、うまくゆかないときなど、ふと心にきざしてしまいます。
でも、大丈夫。それはあなただけではありません。17世紀のラ・ロシュフコーは、その『格言集』のなかで「われわれの真価が教養ある人々の尊敬を引き寄せ、われわれの幸運が有象無象の尊敬を引き寄せる」(165)と言っていますが、こういう「格言」が出てくるのも、昔から自分がなかなか認められず、どうでもいい連中ばかりがちやほやされているのに気分を害していた人が少なくなかったということのあらわれでもあるのでしょう。
「真価」というなにものかをわたしたちは持って生まれてきたわけではありません。真価とは、時間をかけて、ときには一生かけて作り上げるあなた自身にほかなりません。
その仕事が自分の内で完結しているだけのものでないかぎり、かならず何かしらの普遍性を持つものであり、認めてくれる人や喜んで受け入れてくれる人はあらわれるでしょう。
それが証拠には昔話でも真価を評価されるのは、かならずおじいさん(ごくまれにおばあさん)ではありませんか。花咲かじいさんが教養ある人々の尊敬を引き寄せているのかには、多少疑問の余地がありますが。

【天秤座】2008年のキーワード:「幸運」は力持ちではない

別に占いは信じていないというあなたも、おみくじを引いて大吉だと、やっぱりうれしくなるでしょう。周囲を見回しても、どう考えても「運」でその地位に就いたと思われるような人はいます。でも、それをいつまでも持ちこたえる力は運にはありません。寒そうな格好で片足をあげて意味不明のことを口にしている人を、来年わたしたちがTVで見る可能性は、おそらくはそれほど高くないでしょうし、もし見るとしたら、たぶん彼は「運」以外の何ものかを開花させていったのです。運は瞬間に吹き過ぎていく風のようなもの。熟練したハイ・ジャンパーはうまく風に乗れるでしょうし、そのとき乗り損ねたとしても、またつぎがあります。けれど、仮に運だけで遠くまでいけた人に「つぎ」はありませんし、結果として一度だけのその成果が災いとなることもあります。だから「幸運」は女神なんですね。ただ、ギリシャ彫刻の女神像は、米袋をふたつどころか五つぐらいは軽く担げそうですが。

【蠍座】2008年のキーワード:楽しいのは「もの」のせいではなく、あなたがそれを感じる感受性を持っているからである

趣味の多いあなたは、自分を楽しませるすべを知っている人です。詩吟であろうが、お茶であろうが、長刀であろうが、手品であろうが、編み物であろうが、趣味に興じているときのあなたはとても幸福です。でも、それはあなたがそこから楽しみを得ることができる資質や能力を持っていた、あるいは開発させてきたからであって、それ自体が楽しいわけではありません。たとえ誰かがスノーボードをすごく楽しそうにやっていたとしても、最新式の高画素・高倍率のデジカメを持っていたとしても、あなたがそれで楽しめるかどうかは限らないし、逆に、あなたが楽しいからといって、あなたの親しい人がそう感じてくれるかどうかはわかりません。親しい人は、あなたがひとりで楽しんでくれる方を喜んでいるかもしれませんし、その趣味が床磨きだったりすると、なおさらです。あなたの親しい人は、喜んであなたの趣味に没頭させてくれるだろうし、それだって分かり合っていることにはちがいないのです。

【射手座】2008年のキーワード:言葉を呑み込んで消化不良になった人はいない

ふだんは慎重なあなたも、親しい人には、あとになって取り消してしまいたいような一言を、つい言ってしまうことがあります。そういうときは、腹が立ったから、というよりも、自分の方が正しいから、ということのほうが多いもの。
言ってその瞬間はスッキリするかもしれません。でも、その「スッキリ」は一瞬だけ。そのあとには後悔が待っています。
ダンゴムシが昆虫だと言い張る相手が子供なら、「節足動物の甲殻類ワラジムシ目のうち、陸生で体を球状にまるめることができるものの総称」と教えてあげればいいでしょうが、相手が大人であれば、教えるだけにとどまらず、つい、相手をバカにしてしまうことを言ってしまうかもしれません。スッキリしたくなったら、要注意。あなたは危ないことを言おうとしているのかも。

【山羊座】2008年のキーワード:思いだして困ることはない

もしかしたらあなたは記憶力の減退を感じているかもしれませんが(もともと自分は覚えることが苦手だった、と思いこんでいるかもしれませんが、心配いりません、あなただって昔は昆虫の種類だの、怪獣の名前だの、どうでもいいことを山のように記憶していた時期があったのです。減退したことさえ忘れてしまっただけです)、それはあなたに限ったことではありません。モンテーニュは三時間前に人に伝えた、あるいは伝えられた合い言葉を忘れたことが何度もある、と書いていますし、「わたしは割れ目でいっぱいだ。あちこちから洩れ出す」とテレンティウスの言葉を引用してもいます。
でも、たとえ「洩れ出し」てしまっても大丈夫。記憶は、あなたの都合のいいときではなく、記憶の都合のいいときに戻ってくるものだとモンテーニュは言っています。勝手に働いた記憶力が思い出させてくれたことは、一種の贈り物のようなもの。思いだしたのをいいチャンスととらえて、ずっと忘れていた人に、連絡をとってみるのもいいかもしれません。
わたしはさっき、古紙を出すのを忘れていたことを思いだして、少し憂鬱になっていますが、別に年を越したっていいのです。古紙だけに、年越し……(いてっ。石が飛んできた)。

【水瓶座】2008年のキーワード:どんなに親しい相手でもすべてを理解できるわけではない

冷静なあなたは、そのことをよく知っています。どれだけ親しくても友人のすべてを知っているわけではないし、むしろ長続きする友人関係を続けていこうと思えば、適度に距離を保ちながら、もたれ合わない方がうまくいくということも。
けれど、そういう冷静さが保てない関係、たとえば彼氏・彼女に自分の知らない知り合いがいたというだけで、なんとなく裏切られたように思ったり、自分の気持ちをすべてうち明けないままで相手と親密な関係など築けないと思ったりすることがあるかもしれません。
けれど、相手に知らない部分があることが、いったいどういう障害になるのでしょう。自分と異なる人間のすべてを理解しようとすることは、相手を支配しよう、自分のコントロール下に置こうとしているからにほかなりません。
もしかして、「平気よ。わたしには知られて困るようなことは何一つないから」って思っていません? ほんとうに? 高校生のとき、あなたは自分の部屋を持っていませんでしたか? そこに親が入ってきたら、イヤではありませんでしたか? 自律して生きる人には、かならずほかの人に立ち入らせない領域を持つものです。たとえその領域で楽しんでいるのが「ミッフィーちゃんの本を読むこと」であっても、それがその人の、他人に立ち入られたくない領域であれば、見てはならないのです。まちがっても「らしくないねー」なんて鈍感なことは言わないこと。

【魚座】2008年のキーワード:自分のことを一番分かっているのは自分である

あなたはたいていのとき、自分のことをよく分かっています。人に自分のやったこと、なしたことを話しているとき、まわりの人は、別に不審そうな顔はしていませんね? それがその証拠です。ただ、ときにあなたを盲目にすることがある。そういうときは自分を見るとき「こう見られたい」「こう思われたい」という、変な目がねをかけさせられてしまっているのです。「賢く見られたい」と思って、しったかぶりをすると、結局は恥ずかしい思いをするものです。「いい人と思われたい」と思って、自分の意に反することをやってしまうと、あとで苦労して、だんだん不機嫌になり、結局は陰気でいやな人になってしまいます。「こう見られたい」「こう思われたい」というめがねをはずし、自分のことをきちんと見えているあなたが望むことなら、きっと望みはかないます。
たとえ百パーセントではなくても、あなたのことを一番分かっているのは、やはりあなた自身です。ですから、あなたのことを知りもしない太ったおじさんやおばさん、有象無象に基づいた占いや基づかない占いを頼りにする必要はありません。
あなた自身を信頼して、大丈夫。


【再度、念のために】
以上は陰陽道に基づかない占いである。

だが、だれにも未来のことはわからない。まだ起こっていないことは、たとえ一瞬先であってもわからないのだ。にもかかわらず、わたしたちは過去から類推して明日もまた日が昇るだろう、落としたらコップは割れるだろう、世界は同じように続いていくだろう、と信じている。だが、たいていのことはそれで十分で、未来もいまと同じように続いていくことに何の疑問も生じなくても、自分にとってのっぴきならないことは不安になる。受験生は自分が四月、どこにいるか不安だし、就活中の学生は、果たして自分が無事社会人になれるか不安だし、キャロル・キングの "Will you still love me tomorrow?" は、「逢ひみて」しまった恋人が明日も自分を愛してくれるか不安、そうしてわたしは床に積み上げられ獣道を形成している本が、いったい来年はどうなっていくのか不安である。

そうした不安にかすかな光を投げかけられれば、と思うのが、拙ブログの占いの趣旨である。このキーワードがあなたの2008年を照らすおぼろげな光となるかもしれない可能性はまったく否定しがたいわけではないかもしれないのである。記憶の一部にとどめていただければ、これほど喜ばしいこともないのである。

ちなみにこれが過去の占いである。
振り返って確かめてみるのも一興かもしれない。
2006年占い
2007年占い

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2007年はブログ「陰陽師的日常」とghostbuster's book web.をご愛顧くださってどうもありがとうございました。
新年は一月二日から始めますが、四日・五日はお休みします。
しばらく変則的な日程ですが、来年も細々とやっていくのでよろしくお願いします。