陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

昨日から今日にかけて

2007-09-25 22:26:44 | weblog
昨日の夜から熱が出て、仕事がなかったのを幸い、今日は一日中、寝たり起きたりして過ごした。

以前かかったお医者さんで、夏が好きですか、冬が好きですか、と聞く先生がいた。
夏が好きな人、というのは、基本的に夏に強く、逆に冬の寒さに弱い。冬の終わり頃、体調を崩すことになる。冬が好きな人はその反対に、夏のあいだの疲れが出て、秋口に体調を崩しやすいのだという。
お医者さんの口からそんなことを聞いたのは、少し驚いてしまったけれど、確かにどちらかといえば夏の方がいいと思うわたしは、例年、三月になると、たいていインフルエンザに罹ったり、風邪をひいたりして、何日かは寝こむことになるのだった。

それはおそらくそのお医者さんの経験則だったのだろうが、実際、どこまで妥当なのかはよくわからない。それでも例年、夏から秋の変わり目にかけては、あまり体調を崩すこともないわたしだったのだけれど、今年の夏がとりわけ暑かったせいだろうか、昨日の朝から喉がヘンだなと思っているうちに、夕方過ぎから熱が出て、結局早くに休むことにしたのである。

ところで、以前、こんなことを言う人がいた。
下痢をして病院に行くと、水分をしっかり取るように言われるけれど、水分をとれば、また下痢をする。下痢を治そうと思ったら、水分など取らない方がいい。自分はそうやって治すことにしている、と。

この話がおかしいのはすぐわかる。
悪くなった食べ物を食べて吐く、というのは、きわめて正常な反応だ。吐くことが悪いのではなく、悪いものを早く外に出そうとする体の働きなのである。下痢にしても同じことで、下痢そのものに問題があるわけではない。下痢が起こっているあいだは、それが必要な状態だということなのだろうし、そのあいだは脱水症状を起こさないように水分を取りがら、辛抱して待つしかないのだ。

そう考えると風邪を引く、熱を出す、というのも、それと同じで、きわめて正常な反応、ということになる。この場合は、悪いものが体に入った、というより、ふだんならはねのけるようなウィルスにやられてしまうのも、疲れが溜まっているからなのだろう。喉が痛むのも、熱が出るのも、しかたがない。ともかくそれが体から出ていくのを、体を休めながら待つしかない。結局これも、体を休ませなさい、というサインでもあるのだろう。よくしたもので、こういうときはいくらでも寝られる。今日も、ときどき起きてお茶や水を飲んだほかは、ほとんど寝ていたのだった。

寝ていると、さまざまな音が聞こえていた。電車の音、車の音。意外な近さで聞こえてくる、外の道を通る人の話し声。近所の幼稚園で運動会の練習をしているらしい音。遠くの小学校のチャイムの音。カーテンを閉めて、薄暗くした部屋の中で横になっていると、外の物音など意識に留めることもないふだんより、外界を近く感じるのだった。

もともとたいしてひどくなかったので、日が落ちたぐらいから、体がふらふらする感じも抜けた。まだちょっと喉は痛いけれど、明日はもう大丈夫だろう。
いまさっき夕刊を取りに行きがてら、外に出てみると、東の空高く月が白々とのぼっていた。そういえば今日は中秋の名月だったのだ。
木の間よりもりくる月の影見れば心づくしの秋は来にけり
詠み人しらず「古今集」


明日から横光利一とレトリックの話を続けます。あと二回くらいで終わる予定です。