hiyamizu's blog

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伊坂幸太郎『残り全部バケーション』を読む

2013年01月26日 | 読書2

伊坂幸太郎著『残り全部バケーション』(2012年12月集英社発行)を読んだ。

初出が、第一章(2008年単行本・2010年文庫/実業之日本社『Re-born はじまりの一歩』)、
第二章(「紡(つむぐ)」2010年)、第三章(「小説新潮」2008年7月号)、第四章(「小説すばる」2012年11月号)と、年を経てバラバラに書かれた短編を、若干の加筆訂正はあっても、第五章の書下ろしでまとめたものだ。

最初の登場では名前だけで姓が分からなかったり、節が変わると語り手が突然変わっていたりして登場人物が混乱する。
第一章は、沙希が語り手の「家族」と、岡田が語り手の「若い男」が交互に続く。
第二章は、三人称。第三章は、誘拐されて女性が語り手。
これらについて、「青春と読書」で伊坂さんは語っている。

語り手の人称がバラバラで、映画のカットを積み重ねていくような構造になっています。これ、なんだろう? と思わせて、最後に答えが待っている。今度はこれにトライしてみよう、と思って書いた小説です。





私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

伊坂さんの実験的小説だ。多少読みにくいところはあるが、十分楽しめる。いつものようにキャラの立った人物のとぼけた語り、巧妙に張られた伏線。ここでは、溝口と岡田のコンビのやりとりにクスリと笑わせられる。
伊坂ファンは是非読むべき本だ。


伊坂幸太郎&既読本リスト



以下、メモ。

登場人物
早崎沙希(さき):16歳、
父:沙希の父、浮気して離婚へ
岡田:20代、裏の世界の下請けの子分。メールですぐ友達を作れば、グループから抜けられると溝口に言われる。
溝口(みぞぐち):悪事下請け、ゴルゴ13を完読、直感・勢いで行動する
毒島(ぶすしま):ボス
権藤:浮気中に追突させられ脅かされて岡田に協力
坂本雄大(ゆうだい):虐待を受けている小4
坂本岳夫(たけお):雄大の父、31歳
太田:岡田の後任、太っちょ、ドジ
高田:太田の後任


「残り全部バケーション」
父親は浮気をして離婚、娘の沙希は高校の寮に入るので、今日は家族解散の日。母親が呑気に最後にみんなで秘密の暴露をしようという。父親の浮気も、沙希の外泊もわかってたとして却下。
そんな中、父親にメールが来る。

「適番(適当な番号)でメールしてみました。友達になろうよ。ドライブとか食事とか」
「無視だよ、無視」と私。

「お父さん、友達欲しいんだよな」と父。

「ドライブの車って何人乗りか、訊いてみて」と母。「みんなで行く気かよ!」と父。
この話、伊坂家の実話だという

「タキオン作戦」
出会った坂本雄大は虐待を受けていると、父親から虐待を受けていたという溝口が言う。溝口はどうしたって虐待を止めることはできないから、ほっとけという。岡田はけったいな企みを考え、少年に冒頭で裸の男が突然出現するターミネーターのDVDを渡す。

「検問」
溝口と太田は、盗んだ車にさらってきた女を押しこみ走っていると警察の検問にあう。トランクを開けさせられたが、そのまま検問を通過した。後で、その車のトランクに大金が積まれていることがわかる。なんで?

「小さな兵隊」
クラスメートの岡田君は、「問題児」だと言われていた。幾つものランドセルに印をいたずら書きしたり、門を真っ青に塗ったりする。そして、海外に出張中の父親は、電話で「担任の弓子先生に注意しろ」とおかしなことを言う。

「飛べても8分」
溝口は、請け負った仕事でもないのに、突然後ろの車に追突させると言う。予想外の事態で、溝口は大腿骨を骨折、入院する。その病院には高田らのボスである毒島が入院していた。溝口は、相棒の若い高田が「飛んでも八分、歩いて十分」という文句を知らないのにショックを受ける。

コメント
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