草笛光子著『きれいに生きましょうね 90歳のお茶飲み話』(2024年5月30日文藝春秋発行)を読んだ。
今年で芸能生活75年目となる草笛光子さん。
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本書は、その草笛さんが、3年あまりにわたって「週刊文春」に連載したエッセイをまとめたもの。
女優として出演した舞台や映画について、また森繁久彌、三木のり平、勝新太郎、高峰秀子、市川崑といった往年のスターや映画監督などとの思い出を振り返るとともに、日頃の生活や食事、健康法、服装やオシャレなど、さらには老いてゆく日々に思うこと、感じることについて触れています。
マネージャーをしていた母が言った。
「光子ちゃん、私たちはきれいに生きましょうね」
何があろうと、嘘をついたり、他人を押しのけたりするのはやめましょう。卑怯な仕打ちや理不尽な目に遭っても、そこに塗(まみ)れることなく毅然としていましょう。
年と共に億劫になって、自分を甘やかしてしまいます。それでも身体を鍛えるトレーニングは週1回2時間、自宅にパーソナルトレーナーに来てもらって運動しています。
草笛さんは、高峰三枝子、朝倉摂、吾妻徳穂、兼高かおるの死化粧をした。
問題は、私が死んだときです。誰に相談しても私より化粧が上手な人はいないというから、仕方がない。「もうすぐご臨終です」と告げられたら、自分でお化粧をしてから死ぬしかありませんね。
松竹歌劇団に入るためのステップである松竹音楽舞踏学校の60倍の競争率を勝ち抜いて合格した。入学式で宣誓文を読んだのが有名な画家の娘だと知り、「よし、卒業するときは、私が一番になってみせる!」と雑草の負けん気に火が付いた。卒業するときは1番になっていた。
本書は「週刊文春」2021年3月11日号~2024年3月21日号掲載の「きれいに生きましょうね」に加筆修正したもの。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
多くの有名な俳優、監督などとの思い出話が次々に出てくるので楽しく、スイスイと気楽に読める。
草笛さんはのんびり、ゆったりした雰囲気があるのに、本書を読むとかなりな負けず嫌いだ。そうでなければ、長年、競争が厳しい業界でトップを走り続けていなかっただろう。
また、舞台での芝居の仕事は、体力勝負でもあり、この本では自分は怠け者であるかのように語っているが、重ねた歳に適した節制や運動を怠っていない。
さらに、監督、演出家などに可愛がられて良かったなどと述べているが、人間関係に賢く配慮するなど頭も良いのだろう。
さらにさらに、常に新しいことにチャレンジし続けていることが若さの秘訣なのだろう。
私も、厳しい芸能人の世界に入る可能性が、もともとなくて良かった。
草笛光子(くさぶえ・みつこ)
1933(昭和8)年生まれ、横浜市出身。
1950年松竹歌劇団に入団。
1953年「純潔革命」で映画デビュー。
主な出演映画に「社長シリーズ」『それから』『犬神家の一族』『沈まぬ太陽』『武士の家計簿』など。
2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』では真田信繁の祖母役を務めた。
日本ミュージカル界の草分け的存在で「ラ・マンチャの男」「シカゴ」などの日本初演に参加。
舞台・映画・テレビと幅広く活躍し、芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、毎日芸術賞、日本アカデミー賞助演女優賞など受賞多数。
1999年に紫綬褒章、2005年に旭日小綬章を受章。
著書は、1992年『光子の扉を開けて』、2012年初の自伝『いつも私で生きていく』、2018年『草笛光子のクロ―ゼット』、2023年『草笛光子90歳のクロ―ゼット』
2024年、本書『きれいに生きましょうね』
2024年6月21日、90歳の草笛光⼦さんが100歳の主⼈公・作家 佐藤愛⼦を演じる『九⼗歳。何がめでたい』が全国公開。