hiyamizu's blog

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高橋源一郎、山田詠美『顰蹙文学カフェ』を読む

2013年01月23日 | 読書2

高橋源一郎、山田詠美著『顰蹙(ひんしゅく)文学カフェ』(講談社文庫た38、2011年6月発行)を読んだ。

高橋源一郎が、山田詠美に問う。
「もうずっと前から、『文学』なんかどこにもなくて、ないのに、『文学』『文学』とか言ってるとか思われて、『あんた、終わってるよ』っていう視線を浴びてるのに気付いてないのかも、って思わない?」

六本木のコスプレ・カラオで熱唱していたエイミー姐さんは言う。

「何言ってんのよ。誰が何言おうと関係ないわよ。わたしたちが『文学』なのよ!」


文学は顰蹙を買ってこそナンボという山田詠美と高橋源一郎が、現在の若い男性作家にはエネルギーが感じられないとか、作家仲間を言いたい放題、語る。
続いて、「『文学』を見たければ、『文学』がまだあることを信じたければ、この人を見てください」と言うことのできるこれぞ顰蹙者というゲストを迎えて鼎談する。
ゲストは、島田雅彦/中原昌也/車谷長吉/古井由吉/瀬戸内寂聴。

島田雅彦は、芥川賞を取れなかったことを「不幸の栄光」と言う。
中原昌也は、相変わらず「小説を書くのは嫌だ、書きたくない」と言う。
車谷長吉は、9年間世捨て人していたが、セゾンの辻井喬会長に拾われ私小説で直木賞をとり、出家しそこない・・・。
古井由吉は、作品数も減って超権威になり、上がりかけていたのに、カジュアルなものをバンバン書きだし、トホホな感じになった。
瀬戸内寂聴は、昔は5年間も文芸誌に書かせてもらえなかったが、今は顰蹙でなく拝まれるという。

初出:「群像」2005年1,4,8,12月号、2006年7月号、2008年4月号、単行本は2008年6月



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

そもそも「顰蹙買えたら、作家は一人前」って考え方に納得できない人もいるだろう。たとえ、そんなものかと思っても、ただ理由もなく、「これは顰蹙だ!」「これは違う」と決めつけるだけでは納得できない人もいるだろう。
しかし、高橋源一郎や山田詠美の小説を面白いと思う人は、彼等の話に興味を持つだろうし、そうでもない人にとっても、危機に置かれている文学へ屈折した愛情を持つ二人に共感するところも多いだろう。そして、変わり者のゲストとのやりとりに笑わされるだろう。

また、小説好きな人は、各文学賞の選考会の裏話、内輪話や、作家仲間のうわさ話にも興味をひかれるだろう。



高橋源一郎
1951年広島生まれ。小説家、明治学院大学教授。横浜国立大学除籍。1981年『さようなら、ギャングたち』で群像新人長編小説賞優秀賞
1988年『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞
2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞を受賞。
一億三千万人のための小説教室
小説の読み方、書き方、訳し方』(柴田元幸と共著)
訳書に、ジェイ・マキナニーの『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』
5回結婚し、57歳当時、35歳の長女を頭に、1歳と3歳の子供がいた。



山田 詠美
1959年 東京生まれ。明治大学文学部中退。
1985年「ベッドタイムアイズ」(文藝賞受賞)で衝撃的デビュー。
1987年 『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞
1989年 『風葬の教室』で平林たい子賞
1991年 『トラッシュ』で女流文学賞
1996年 『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞
2001年 『A2Z』で読売文学賞
2005年 『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞
2009年『学問
2010年『タイニーストーリーズ


コメント
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