ひらりん気まま日記

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谷崎潤一郎『蘆刈』

2012-06-17 23:31:47 | Book&Art&TV

平等院緑陰

昨日の朝日新聞beのコラムに田中慎弥(芥川賞受賞)が食べ物のことを書いていて、谷崎潤一郎の短編小説に、月見に出かけた水無瀬で酒2合と狐うどん2杯…という箇所があるが、狐うどん2杯も食べるか?etc.と。
たまたま、仕事場の書棚にその『蘆刈』が載っている本があったので借りてきた。
谷崎潤一郎なんて読むのは初めてである。
昭和7年発表の小説だけど、「読点」がほとんどなく、センテンスが長いわりには言葉は平易ですらすら読めた。
小説の舞台になっているところは、私の住んでるところから淀川挟んだちょうど川向うの山崎(サントリーのあるところ)辺りで、この中に秋の夕暮に浮かび上がる男山のことも書かれている。
渡し船の中州というのは桜で有名な背割堤のことでしょう。
昭和の初めなら、人家も灯りもほとんどなく、そんなところでひとり月見など風流なことである。
昔は灯りよりも闇のほうがなじみがあったから、暗いのも平気で、だから月明かりや星の光がいっそう心にしみたのかもしれない。
現代はやっぱり明る過ぎ。
月見の風情から、中州で出会った男の父親の恋話が挿入されて、夢かうつつかちょっと不思議な小説であった。