『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  785

2016-05-21 04:20:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 木板を受けとった二人は驚いた。覗き見るトミタスは、驚嘆の目を見開いた。世の中に数ある『さか』のうちのひとつ『まさか』に驚いた。
 彼らにとって驚きの2枚の木板である。1枚には、新艇の仕様が書かれている。艇の長さが解る、幅が解る、艇体の深さが解る、帆柱の高さも書いてある、櫂座の数についても書いてある。これでもって新艇全体の大きさがつかめた。もう1枚の木板には、帆張りした新艇が海上に浮かんでいる姿の想像図が描かれてあった。
 この2枚の木板が如実に新艇を物語っていた。これを目にした者は、新艇を理解する、また、この新艇に乗り、これを駆って海をかける自分の姿を脳裏に描く。
 『この船を我がものにしたい!』欲望を喚起させるにふさわしい2枚の木板であった。
 ハニタスが口を開く。
 『お~お、これはいい!実に素晴らしい』感嘆の声をあげた。スダヌスがハニタスに同調する。二人は、感極まって唖然としていた。
 オキテスは、この様子を見ながら口を開いた。
 『如何がですかな、この2枚の木板は?新艇の売り込みに使っていきたいと私らは考えています。何卒宜しくお願いします』
 彼はここで言葉を切って、一同と目を合わせる、目にものを言わせたい。
 『ところで新艇の販売価格を発表いたします。私らは、集散所の方より提示された価格をもとに鋭意検討いたしました。どのような条件で、この価格が決まられているのかについて検討いたしました。私らも価格決めに関係する諸条件を私らなりに厳密に検討し、私らが考えた原価を低く抑える建造手法を取り入れて建造している新艇の価格を決めることができました。私らが売り出す新艇の価格はこれです』と言って、オロンテスが木板に書きつけた数字を披露した。
 『おお~っ!』
 ハニタス、スダヌス、トミタスの三人が驚きの声をあげる。
 『何ということだ!この価格は!オキテス殿、その価格で売り出してよろしいのかな?その価格の中に当集散所の取り分の利益も含まれていると考えていいのですな』
 『はい、それについては、私らは、配慮怠りなく考えております。これについては、ハニタス殿と私の二者で話し合いたいと考えています。よろしいですかな』
 『解りました。いいでしょう。私は、了解いたしました。この会議の場では、唯一の第三者でいられるスダヌス殿、この新艇販売価格承認いただけますか?』
 『はい、承認いたします。集散所が利益としての取り分については、当事者で話し合っていただきたい』