『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ７７３

　『それが最短の用材の調達日程であろうと考えられます。よろしく願います』
　『解った』
　オキテスは、ドックスの声がけに力強く答えた。
　ドックスは、ヘルメスに取り付いて、一同に声をかけた。
　『作業要領から考えて、ヘルメスを裏返す必要がない。今の状態の方が造作を行いやすい』
　ドックスは、パリヌルスに造作の念押しをする。
　『パリヌルス隊長、艇にする造作は、第一案ですね！すぐに作業に取り掛かります。ギアス艇長と一同に手伝ってもらいます』
　『ギアス艇長、そういうわけだ、よろしく頼む』
　『はい！』と答えるギアス。作業が始まった。
　ドックスが場の作業者１０人を引きつれて、建造用材の貯木場に向かった。
　建造用材が積まれている場である。ドックスが用材を探す、角材の一辺が１スパンの角材、角材としては、太い部材である、貯木の中に数本ある、用途を考えずに調達していた用材である。しかし、残念ながら、新艇の長さに比べると少々短い、通しで使えない、唇を噛む、迷ってはいられない、決める、彼は数本のうちの２本を選んだ。
　『おう、この２本を使う！この２本をヘルメスのところへ運んでくれ』
　『判りました』
　１本の角材を二人が肩に担ぎ運んでいく。戻ったドックスが一同に作業要領を告げる。
　『おう、一同！聞いてくれ！これからヘルメスの船底の採寸をやる。その要領は、ヘルメスの片舷を持ち上げる。俺が下に入って寸法を取る、いいな』
　『はい、判りました』
　『では、取りかかる、全員位置についてくれ』
　全員が位置に就く。
　『よし！いいぞ！持ち上げてくれ』
　彼らは、気合一声、ヘルメスの片舷を持ち上げた。
　ドックスが例の手作りの縄尺の一端を船首部の下端、舳先の底部に釘で打ち止め、船底の長さの採寸を終えた。ドックスの指示によりガリダ方より派遣されている製材担当者の一人に角材の艇首部及び艇尾部の整形と角材の連結部の連結要領が説明されており、満足のいく状態に仕上げられている。
　ドックスがここまでの仕上がり状態をチエックする、彼は満足した。
　『よし、これでいい！一同！次の作業に取り掛かる、いいな。次の作業の要領を説明する』
　彼は次の作業要領を事細かに説明した。
　『一同、理解したな。狂いが許されない作業だ。慎重に、慎重に事を運んでくれ』
　『了解しました』