『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  780

2016-05-14 04:45:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は、ギアスの問いかけに考えを巡らせた。そうこうしている間にヘルメスは船だまりに帰ってきた。
 『もう、帰ってきたか。ほんとにちょいの間の試し乗りであったな、ギアス。この走りなら、櫂舵の水切り、少々大きくした方が効果ありだな。俺はお前の考えに賛成だ』
 『浜頭ありがとうございます。今日帰ったら、パリヌルス隊長にこのことを話します』
 『おう、そうせい!そこで聞くが、ヘルメスが変わっている、どこをどのように変えた?』
 『はい、船底に横ブレを抑える角材を取り付けました』
 『そうか、船として進化している、走りが違ってきている。走りが安定している、見たところ航跡も変わっている。いい船になった。当然、新艇にもその造作をするのだな』
 『はい、そうです』
 『ギアス、ありがとう。俺を試し乗りに誘ってくれた、礼を言うぞ。櫂舵の水切り部分の改良をしろよ!お前の考えについての俺の太鼓判だ。おう、一同、ありがとう』
 『おうっ!』一同が答える。
 『スダヌス浜頭、ありがとうございました』
 ギアスは、去りゆくスダヌスの後ろ姿に礼を述べた。手を振りながら遠ざかっていった。

 オキテス、オロンテスの二人は、集散所の小部屋にいる、ハニタスらと話し合っていた。彼らの要件は、ドラクマ銀貨の受け取りと進水催行への出席依頼である。
 ハニタスが声をかけてきた。
 『あ~、オロンテス殿、先日はご苦労でしたな。私らの考え及ばない大量の木札を受け取りました。ドラクマ銀貨に交換する計算を済ませました。そして、ドラクマ銀貨を準備いたしました。今、お渡しいたします。どうぞ、お納めください』
 ハニタスがトミタスに指示する。彼らは、丁寧に応対してくれている。
 『トミタス、オロンテス殿に準備したドラクマ銀貨をお渡ししてくれ』
 『はい、判りました。オロンテス殿、ただいまお持ちいたします』
 トミタスは立ちあがり隣室へと向かう、ドラクマ銀貨をのせた盆をささげて姿を見せる、二人の前に銀貨をのせた盆を置く、丁重に言葉をかけた。
 『どうぞ、お受け取りください』
 『いただきます。たいへん、お世話をかけました』
 『いやいや、そのようなことはありません。それにしてもスダヌス方との取引も結構な額でしたな、このことについては、私どもも大変に喜んでいます。あなた方の仕事の成果が私どもの成果につながっています。うれしいことです』
 『そのように言われると私どもの励みになります。ありがとうございます』
 オロンテスは、携えてきた袋に銀貨を入れた。
 『オロンテス殿、こちらに受け取りのサインをいただければ』と言ってオロンテスの前に文言を書いた木板を置いた。
 文言に目を通すオロンテス、木炭を手にしてサインをする、木板をトミタスに渡した。