『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  779

2016-05-12 05:08:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 集散所へ向かう一行を送り出してギアスは、漕ぎかたの一同とヘルメスの走りについて語りあった。
 『おう、お前ら、今日のヘルメスの走り、どのように感じた?ちょっと話してみろ!』
 『そうですね。これまでのような横ブレがなくなっています』
 『前へと走り、ブレにくくなったような気がします』
 『艇の進行方向が安定してきているように思われます』
 『ほう、そうか。今、お前らが言ったことが今回の造作の目標であった。俺も舵をとっていて、そのように感じたな。昨日の造作の効果が出たということか』
 ギアスは彼らの言い分を聞きとめ相づちをうった。
 彼は空を仰いで頃合いを測った。
 『おう、俺は、ちょっと出かけてくる』と言いおいて、スダヌス浜頭のところへ出向いた。
 スダヌスは、売り場で大声をあげて指示を出している、間ができる、ギアスは声をかけた。
 『浜頭、おはようございます。今日は価格決め会議の最終回の日ですね。長い時間はとらせません。ちょっと、ヘルメスに乗ってみませんか?』
 『おう、ギアス、おはよう。どうした?』
 『はい、新艇について、よく知っておいてもらいたいと思いまして』
 『おう、そうか。ヘルメスにひさしく乗っていない。!いいだろう、ギアス、行こう』
 スダヌスは、快諾する、売り場の者たちに二言三言、言いおいてギアスと連れだって船だまりへと向かって歩を進めた。
 『おう、ギアス、今日は、いい航海日和だ。仕事がなければ、船遊びをやりたい、そんな気分の日だな』
 『そうですね。そのような気になる日和です』
 船だまりに着く、スダヌスを艇上にいざなう、ギアスが漕ぎかたらに声をかける。
 『ちょっぴり沖に出よう。漕ぎかた頼む』
 ギアスが舵座につく、櫂舵をとる、ヘルメスは西へと向かう、方向転換点に到る、方向を転じて帆張りをする、風をはらんで帆走にうつった。
 『浜頭、操舵を代わります』
 『おうっ!』
 スダヌスが櫂舵を握った。
 『浜頭、私の思いつきですが、櫂舵の水切り部分をほんの少し大きくしようと考えています。浜頭の考えを聞かせてください』
 『おう、解った』
 スダヌスが操舵をしながら首をかしげている、目は、ヘルメスの航跡を見つめている、ヘルメスが変わっている、その変化に気づいた。波を割って進むヘルメスの走りの進行方向の維持具合が変わっていることに気づいた。