『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  777

2016-05-10 09:25:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今を生きるといったイリオネスの考えも賢明なら、一族を率いているアヱネアスは、建国の使命思考について賢明にもがいている。思考の大海の深淵にもがき沈んでいく思いであった。
 思考と決断が、いま、クレタの地において、使命である建国が可であるや否やで決断思考がもがきのたうっている。一族が生きていくことと建国とでは質が異なる。
 父アンキセスの言い分を是とするか否や、彼はそのことについては考えているが、心を決めかねている。口にはしないが、思考の領域に入れていた。
 摂理の至妙な計画、見えない未来、クレタは、アヱネアスの意志を受け入れるところなのか、スタンス位置をかえて考える、あらゆる分野の使命実現の条件をプラオリテイを設定して細かくチエックしている、未だに答えが見えてきていない、脚下照顧するも確かな一歩を踏み出せずにいる、己を見つめる、冷静と自制を失う時もある、悶々と時を無駄に過ごす、しかし、不思議であった。あきらめを感ずることがなかった。『なぜ?』『どうする?』『可か、否や』がふつふつと想いの中に浮かんでは消えていく、意をひきつける、モチベートする得体のしれない希望ともとれるクラウドが目に見えない視野の中に存在していた。
 彼が決断する事態の訪れることをまだ察知はしていないが、手を伸ばせば届くところまでに迫っていたのである。
 
 オキテスとオロンテスは、明ける朝が待ち遠しいといった感じで朝を迎えた。ギアスも朝が待ち遠しかった。三人の同期的行動現象と言えた。また、漕ぎかたの一同も胸に期待のさわぎを感じて起きだし、ヘルメスの浜に立っていた。
 ギアスが姿を見せる、彼らに声をかけた。
 『おう、おはよう』
 『おはようございます』
 『おう、お前ら、やけに早いじゃないか』
 『胸がさわぐ!寝てられない!そのようなわけです』
 『ほう、何が、お前らを駆りたてているのだ?』
 『判りません、せずにおられない!』
 『ただただ、何かが、俺らをひっぱっているといった感じです』
 『ギアス艇長も早いじゃないですか』
 『言われてみればそうだな』
 ギアスはそのように答えて一同と明けやらぬ薄闇の中で一同と顔をあわせた。
 『おう、よく聞けよ!アサイチで風読みをした。今日は、いい航海日和になるぞ!帆張りにいい風が西からくる!ここ一番の晴れ晴れ天気だ。一同!今日も行こうぜ!』
 『おうっ!』と返す。
 『少し早いが、ヘルメスを海に出そう』
 総がかりでヘルメスを海に出した。