『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  219

2014-02-28 08:16:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、ギアス、ご苦労。小島の連中、どうしていた?』
 『彼らは相変わらずです。ギョリダを中心に新しい釣り針で仕掛けつくりをやっていました。ギョリダの話では、明日、頃合いを見て漁場に行くようです。彼は思案を巡らせていました』
 『そうか、彼らも真剣に取り組んでいるようだな』
 『隊長、私から報告です。アバスなきあと、このサクテスが私の右手となってくれています。そのようなわけで彼に仕事を引継ぎます。ここ一両日の間に引継ぎを終了します』
 『判った。それでだ、明日の予定だが、ハシケにこの俺を乗せて、小島を一周してほしいのだ。サクテスも同道だ。用向きについては明日話す、以上だ。あ~あ、もうひとつ、明後日はオロンテスを乗せてキドニアに行くわけだが、舟艇には俺も同乗する』
 『判りました。出発する少々前に隊長を呼びに行きます』
 『おう、ありがとう。そうしてくれ』
 ギアスとの打ち合わせを終えたパリヌルスは、浜をあとにした。茜色に変わりつつある陽の光が浜と小島、そして、一帯の海を照らしていた。
 パリヌルスが宿舎に戻った。夕食がすでに届いていた。寝食を共にする者たちがまだ帰ってきていない。彼らは撃剣の調練をやっている。もう終わるころだろう、彼は待った。『うん、このような日もある』彼は夕食のパンを眺めて空腹を感じた。ガヤガヤと声が聞こえてくる、トピタスの声も聞こえる、宿舎に人影が満ちてきた。
 『あっ!隊長。戻っておられましたか』
 『おう、トピタス。今日の撃剣練習はどうだった?左腕に血がにじんでではないか』
 『はあ~、これですか。対手の剣をうけそこなったのです』
 『まあ~、血のにじみ具合から見て大したことはないと思うが、用心にこしたことはない。すぐ、小川で洗うのだ。この季節だ、膿むようなことはない、薬をもらって塗り込んでおけ。明日までに治る。待ってやる、すぐ行って来い!それから、めしだ』
 『ありがとうございます。では、行ってきます』
 トピタスは戸外に出て40~50メートル先の小川に向かった。
 しばらくして、宿舎の一同の顔がそろった。カイクスの掛け声合図で夕食が始まった。パリヌルスは待ちかねていたようにそそくさと夕食を済ませて、イリオネスの宿舎に歩を運んだ。
 夜のとばりが降りきっていない、うす明るさであった。