『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  200

2014-02-03 08:13:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、みんな集まってくれ!』
 テカリオンは船上の者たちに声をかけた。
 『お前たち、朝から大変ご苦労であった。小麦の荷卸し大変だったろう。この浜には、桟橋、埠頭の類の設備がまだできていない。船から浜までの荷運びが大変な仕事だ。しかしだ、あの舟艇を荷運びに使った具合はどうであった?』
 『船主殿、あの舟艇はなかなかでした。考えていたよりぐ~と楽に仕事をこなすことができました』
 『おっ!そうか。それはよかった。では今日の予定を伝える。即、出航する。行く先はキドニアだ、いいな。キドニアで用件を済ませたら、ミレトスに向かう。船長、風の具合はどうだ?』
 『はい。いまは、いい西風が吹いています、キドニアに向けては順風状態です。キドニアからの出航については現地に吹く風の状態に少々の懸念があります』
 『判った、直ちに出航だ。いいな』
 『判りました』
 『オロンテス殿いかがですかな。出ます。いい風が吹いています。順風です』
 船長の声が船上に飛んでいる。
 『碇をあげろ!』『帆をあげろ!』『漕ぎかたはじめ!』
 テカリオンの船は波を割り始めた。テカリオンをはじめ、オロンテスたちは浜に目を移した。浜では、居並ぶ者たちが手を振っている。彼らはそれに答えて大きく手を振った。
 船は風に押されてキドニアへ向かった。テカリオンがオロンテスに声をかけてきた。
 『オロンテス殿、見られましたか。この船では、船止めに従来の重石を使っていません。船止めに使っているのは『碇』と呼んでいる青銅でできている重りです。重石だと引きずられることがあって、船が停止点からずり動く不安がありますが『碇』だとその心配をほとんどしなくてもいいのです。引きずられる方向に海底にくい込んで船が動かないようです』
 『ほっほう、それはいいですね』
 二人の話し合いが始まった。
 『ところでオロンテス殿、集散所での話し合いの要領について打ち合わせておきたいと思いますが。今日は、ハニタスも集散所に姿を見せているとは思います。私が考えでは、話はとんとん拍子で決着すると思っています。オロンテス殿の考えでは、いつからの活動開始を目論んでいられますか。これが話の一番に出てくると思います。その予定は?』
 『それは3日後から始めたいと考えています』
 『で、取り扱う品物は?』
 『私らの焼いているパンです』
 『いいでしょう。それに加えて、おいおい取り扱う品を増やしていかれるといいと思います。貴方のところには、人手と畑地という大変な資産があります。これを使うことです』