『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  205

2014-02-10 12:54:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスは、自称、魚について詳しいというギョリダを呼んだ。
 『ギョリダ見てみろ、この釣り針を、どうだ』
 『あ~あ、これは新しい針ですな。私ははじめて目にします。隊長』
 と言いながら釣り針のひとつをつまんで陽にかざした。
 『いや、いい出来の釣り針ですね。針の大きさといい、鋭さ、かえしの出来もなかなかいい感じです。それに材質が鉄ですね。言うことなしのいい針ですな。これがどうしてここにあるのですか。しかし、あとは使ってみてのうえでの評価ですな』
 アレテスはオキテスのほうを向いて言葉短く、
 『隊長、遠慮なくいただきます』
 彼は釣り針の入った木の箱をさしあげ頭を下げた。
 『さっそく、明日の漁から使わせていただきます。釣果については、おって報告いたします』
 『おう、そうしてくれるか。判った』
 二人は目でうなずき合った。
 『パリヌルス、話は終わった。お前、何か用事がまだあるのか。浜に戻ろう。今日は多忙だ。アレテス、大変馳走になったな、ありがとう。では頼んだぞ』
 パリヌルスもアレテスに声をかけて舟艇に乗り込んだ。浜に向かう艇上で二人は打ち合わせた。
 『オキテス、いいだろう、夕めし前に事をかたずけよう』
 ほどなく浜についた艇から降りた二人は『では』の一言を言い残して思い思いの方向に足を向けた。
 オキテスは、部下のマクロスに言いつけて、部下の中から10人余りの者を指名して集めることにした。
 『おう、マクロス、俺は、広場にいる、今言った者たちを至急に集めてくれ』
 指示を受けたマクロスは急ぎ動いた。時間はかからなかった。
 『隊長、集まりました。1名だけ連絡がつきません』
 『そうか、判った。それでいい、気にしなくていい』
 『おう、諸君ご苦労。立ちっていては気が落ち着かん、腰を下ろせ。今、マクロスの手配りによって君たちに集まってもらった。君等はもう知っている思うが、俺が試しに造った『風風感知器』だが、あれを造ることになった。個数は60個が目標だ。これをやるについて、いろいろと手数もかかる。そのようなわけで『風風感知器』を造る班を編成してこれに当たることにした。判るな』
 彼は一同を見渡した。