『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  208

2014-02-13 09:11:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、目を閉じることなく闇の中の一点をじ~っと見つめた。小さい課題が頭の中に浮かびあがってくる。『ガンガン』の事である。考えをまとめた。
 『よしっ、これでいく、複雑を避ける。しかし、手を省くとはどういうことだろう』と考えた。
 人間が生きていくカタチをふと考えた。
 『手を省く、それはなまくらをするということか。はたまた、それも文明かな?人類の文明開化は、知恵が生みだしている。なまくらをするようにすることが文明開化か、そうでもなかろう』
 『まあ~、いいような、わるいようなものだな』
 そこまで考えがたどり着いたとき、闇の中にこだまする声を耳にしたような気がした。闇の中の声はイリオネスに呼びかけていた。
 『文明開化はそれだけではない。よ~く考えろ。不明としていることを明らかにしていく。それが文明を開いていくということだ。それをわきまえて事に当たっていくのだ』
 眠気が襲ってきた。彼は目を閉じ、眠りの深淵に落ち込んでいく、声も途絶えて闇の静寂であった。

 集落に朝が訪れる。彼らの一日は朝行事から始まる。ユールスを連れたアヱネアスが朝行事を終えて宿舎への道をたどっていた。行き交う者たちと朝のあいさつを交わしながら、いつもの地点についた。この地点は、ほぼ、集落と小島の浮かぶ海を目にすることのできる地点なのである。彼は立ち止る、集落を見渡し、海を振り返った。特別の感興は沸いてこない、ふと思った。いつの日にか、この地点がこの俺に『何かを感じさせる』であろうと想いつつ止めていた歩を動かした。
 『さあ~、ユールス行こう。今朝もうまい朝パンを食べような!』
 アヱネアスは、最も身近な手の届くところにある希望をユールスに与えた。こうして今日が始まった。かれは、民族の遠い未来を俯瞰しながら、今に心配りをしていた。前からイリオネスが近寄ってくる。
 『あ~、統領、おはようございます。昨夕、少々遅かったですが、キドニアおもむいたオロンテスの一行が無事、帰着しました。朝の打ち合わせ会議の要請がきています。朝食が終わり次第、統領の宿舎前でやることにしています』
 『おう、判った。大変ご苦労であったなオロンテスは疲れた感じだったかな?』
 『それは案じられるほどの事はないと思います。安心してください』
 『おっ、そうか、それはよかった』
 それを案じるのが、俺の仕事だといった心情で対応した。