『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  212

2014-02-19 07:36:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、イリオネス、お前の言うことにうなづける。そうであるだけに俺の一歩に間違いがあってはいけない、一歩踏み出す前によく考え、踏み出して検証している。そんなこんなで常に照顧している。俺が先導して、一団を率いてくるのが、イリオネス、お前か、そういったところだな。政には、抽象的な部分がある。それを具体的に考えるよすがにするのが戦略思考だ。戦略は、大別して、大戦略、中戦略、小戦略の三段階に分けて、思考する範疇と領域の広がりを少々異にする。大戦略は、実行後の集団の生活までに思考を及ぼす、だが小戦略は、領域を絞り込んだうえで成功を必然として実行する。まあ~、うまくは説明していないがそういったところだ』
 『やや、むつかしい考え方ですね。そうですね。今、我々集団の目指しているところは、経世致用、富国強兵、踏み出せ一歩、脚下照顧です』
 『お前いいことを言ってくれる、その四つの文言、いい言葉だ。しかしだな、イリオネス。俺のハートがこの身体に語り掛けるのは『俺もみんなと同質の汗を流したい』だ。それによって皆と同質の労を共有できると考えている』
 『いいですね!統領の意向に感じ入りました。統領と私、そのような機会を持とうではありませんか。考えます。統領のような盟主を抱く私どもは幸せな集団と言えます』
 『イリオネス、そんなに俺をよいしょするな。俺こそいい者たちを擁している集団の長といったところだ。皆が力を合わせていい国、いい明日を築いていこう』
 『判りました』
 二人は、語り合い、互いの意志を確かめた。集団のベクトルは、進む方向も正しく、その持てる力にも頷けた。彼ら集団の意志力にも納得する語り合いであった。
 アヱネアスは、踏み出す『一歩』が確かであることに自信を持った。
 しかし、彼がスタンスしているクレタの大地は、クレタ島の自然事情、また、クレタ文明を築いたという人為的事情によって、過ぎた昔の豊穣度を失いつつあった。