蝉が鳴くのを聞いていると、昨年から数年前くらいの前の、このころに詠んだ歌を、思い出します。
よのうれい ひとのうれいも なくせみの いまをかぎりと ねをのみぞきく
世の憂ひ 人の憂ひも 鳴く蝉の 今を限りと 音をのみぞ聴く
(世には多くの憂いがあり、人にも多くの憂いがあります。蝉はそんな憂いは何もないかのようにひたむきに鳴き、私はその蝉の声をひたむきに聴いています)
おおえだの かげにすずみて せみしぐれ ひぐらしのねを みのりとぞきく
大枝の 陰に涼みて 蝉時雨 蜩の音を み法とぞ聴く
(大きな枝の下陰に座って、向きの定まらない風に吹かれていると、蝉時雨の中にときおり蜩の声が交り、いつまでも続く天地の経典に聴き入っているようでした)
ちからつき いのちうつりし なきがらに とむろうごとき せみしぐれゆく
力尽き 命遷りし 亡骸に 弔ふごとき 蝉時雨ゆく
(力尽き命失われ、地面に落ちた蝉の亡骸に、盛りを過ぎた蝉時雨が、弔うかのように、静かに注いでいます)
いたましく ふみしたかれし なきがらを つちよりはぎて くさむらにひむ
痛ましく 踏みしたかれし 亡骸を 土より剥ぎて 草むらに秘む
(痛々しく踏みつぶされた蝉の亡骸が、土に張り付いているのを、壊れないようにゆっくり剥ぎ取って、草むらに隠しました)
このあめを かぎりとおもう みちゆきに とだえもはてず ひぐらしのなく
この雨を 限りと思ふ 道行に 途絶えも果てず 蜩の鳴く
(この道を歩くのもこれで最後かと思いながら行くと、雨が名残りのように降ってきて、蜩の鳴き声が途切れてはまた鳴きだして、いつもまでも止むことがありません)
日守麟伍ライブラリ
くりぷとむねじあ歌物語
くりぷとむねじあ和歌集
古語短歌への誘い
よのうれい ひとのうれいも なくせみの いまをかぎりと ねをのみぞきく
世の憂ひ 人の憂ひも 鳴く蝉の 今を限りと 音をのみぞ聴く
(世には多くの憂いがあり、人にも多くの憂いがあります。蝉はそんな憂いは何もないかのようにひたむきに鳴き、私はその蝉の声をひたむきに聴いています)
おおえだの かげにすずみて せみしぐれ ひぐらしのねを みのりとぞきく
大枝の 陰に涼みて 蝉時雨 蜩の音を み法とぞ聴く
(大きな枝の下陰に座って、向きの定まらない風に吹かれていると、蝉時雨の中にときおり蜩の声が交り、いつまでも続く天地の経典に聴き入っているようでした)
ちからつき いのちうつりし なきがらに とむろうごとき せみしぐれゆく
力尽き 命遷りし 亡骸に 弔ふごとき 蝉時雨ゆく
(力尽き命失われ、地面に落ちた蝉の亡骸に、盛りを過ぎた蝉時雨が、弔うかのように、静かに注いでいます)
いたましく ふみしたかれし なきがらを つちよりはぎて くさむらにひむ
痛ましく 踏みしたかれし 亡骸を 土より剥ぎて 草むらに秘む
(痛々しく踏みつぶされた蝉の亡骸が、土に張り付いているのを、壊れないようにゆっくり剥ぎ取って、草むらに隠しました)
このあめを かぎりとおもう みちゆきに とだえもはてず ひぐらしのなく
この雨を 限りと思ふ 道行に 途絶えも果てず 蜩の鳴く
(この道を歩くのもこれで最後かと思いながら行くと、雨が名残りのように降ってきて、蜩の鳴き声が途切れてはまた鳴きだして、いつもまでも止むことがありません)
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