自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャガイモの真正種子と,その周辺の話(2)

2013-11-26 | 随想

ジャガイモはよく,サツマイモと比べて話題になります。あるいは,サツマイモとの組み合わせで話のネタになります。ともに根菜類に分類される野菜です。

そして,二つとも種子植物でもあります。植物は,種子植物と胞子植物とに大別されます。そのうちの種子植物はすべて花を咲かせて種子をつくります。自分の目で花を見たことがある,ないに関わらず,そうなのです。花は生殖器官なので,実・種子をつくるという使命を帯びて生じてくる器官です。花が咲かないのに実・種子ができることはありません。

したがって,ジャガイモもサツマイモも,花を咲かせて実・種子をつくります。ただ,それを見たくても,実際はなかなか見られない背景があるわけです。

ところで,植物は種子や胞子だけで子孫を増やしているわけではありません。長い生命史の中で,種子植物は種子だけに頼らず,いろんな手を身に付けてきました。それは,たとえば挿し木・接木であり,たとえば球根です。挿し木・接木は人為的に行われるクローン繁殖法です。この典型例は二十世紀ナシやソメイヨシノ。世界中の二十世紀ナシもソメイヨシノも,種子でなくたった一本の木から増えてきたのです。つまり,すべての二十世紀ナシ・ソメイヨシノは自分の分身だというわけです。今風にいえば,DNA鑑定すると完全に一致することになります。

球根は,植物自体がより確実に次世代を残したくて意図的につくり出したカプセル(栄養体)です。花後のチューリップを掘り起こせば,カプセル,つまり球根がいくつかできているのがわかります。同じ品種のチューリップはすべて球根から栽培されます。

私事になりますが,家の庭に植えている樹木で,わたし自身が挿し木で育てたものが相当数あります。サザンカ(下の上写真)・ツゲ・マキの生垣及びサツキの植え込み(下の下写真),それにロウバイです。古いものは20年以上経っています。

 

挿し木・接木や球根のほかにもたくさんの繁殖法がありますが,すべてに共通しているのは“再生”原理がはたらいている点です。今でいう再生医療という用語を思い浮かべればいいでしょう。要するに,からだの一部からからだ全体,あるいは必要な組織をつくり出す,ぐらいの理解で十分です。

挿し木・接木をすればからだ全体がよみがえる,球根を植えれば元のからだとそっくり同じものが生まれる,そうしたすばらしい能力を植物はとっくに身に付けているのです。

 


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