自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

Q「野草紙づくり,乾燥でうまくいかないのですが……」(続)

2017-08-12 | 野草紙

Kさん親子(父子)がはるばる隣りの県から漉き枠や失敗作を手にして来館。お子さんは4年生。親子で野草紙作りをテーマにして,自由研究に熱心に取り組んでいらっしゃる様子が窺えました。

紙漉き用具は,わたしが雑誌で紹介したものを参考にしてきちんと作っておられました。親子合作という話でしたから,紙作りの第一歩から親子共同の足跡が見え見事だと感じました。

下写真ははじめに見せていただいたツユクサの紙です。板で乾かしたので,腰がしっかりした紙になっています。上の方が剥がれかけていることを気にしていらっしゃいましたが,「誰がやってもなりがちなので,仕方ないことです」とお答えしました。板と紙の結合力よりも,紙繊維同士の結合力の方がはるかに強いので,繊維同士がしっかり引っ張り合った結果です。

もし無理に,ガムテープを使ってでも固定しようものなら,紙にひびが入るでしょう。それは,ツユクサの繊維が短いために,繊維の結合が破られるからです。あるいは,他の箇所で剥がれ始めるでしょう。

 

 

次に見せていただいたのは,今回の訪問のテーマどおりの失敗作(?)。タンポポの葉を材料にした紙です。海草のようになっています。

葉だけから紙を作るという発想は立派。紙繊維が短すぎて,繊維が互いに引っ張り合いながら乾いたことがわかります。板との結合力の方がはるかに頼りなかったのです。これを防ぐには,繊維がある程度長いものを集める必要があります。そうすると,繊維の同士の重なりが増えるために変形しにくくなります。

長い繊維を集めるには,葉の根元の丈夫な繊維を集め,アルカリ剤を少なめに,煮る時間も短くします。弱い繊維はやさしく扱うことにします。

 

3つ目はオオバコの葉を材料にしたもの。

タンポポのように極端な縮み方をしていないのは,オオバコの繊維の性質によるのかもしれません。長めの繊維を残すようにして紙繊維を取り出すとうまくいくはず。

 

これらの紙は,アイロンで乾燥させてもまずできません。弱々しいほどに頼りない繊維では,上からの圧に耐えられないでしょう。薄手の紙は自然乾燥でしか作れないのです。

Kさん親子は再び挑戦したいとのこと。きっとすてきな親子対話につながるでしょう。すてきな夏休みになるでしょう。

失敗はたくさんの知恵につながります。失敗から学ぼうとする積極的姿勢を応援したいですね。 

 


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