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自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

象糞紙を漉く(1)

2016-06-22 | 野草紙

象の糞から紙を漉く試みについて,シリーズで記事にします。

昨年,久しぶりにこの試みをしたくって,ある市立動物園に電話をしました。趣旨を伝えたあと,「以前に象糞をいただきました。今回もぜひご理解のほどを」と付け加えました。ところが,係員の方いわく「それはどうも……」と,電話口で困惑気味の様子。「上司に電話をつなぎます」とのことで,上司の方が出られ,丁重に「それはできません。防疫上,どんな病気が発生するかわからないので応じかねます。当園がとやかくいわれるのは困りますので,無理です」ときっぱり。「どうしても無理ですか」というと,「どなたがおっしゃろうと無理ですね」とダメ押し。糞の行方について尋ねると,「園が契約している農場に持ち込んでいます」とのこと。

わたしはこれ以上のことは無理と判断して,象糞紙づくりは諦めました。それにしても,同園の対応にはじつに形式的で,杓子定規な響きがありました。さすがに事なかれ主義の公務員体質だなあと恐れ入った次第です。自分を棚に置いて自己弁護するいい方になるかもしれませんが,これって融通の余地もないシャットアウト対応に見えますが。いささかうんざり。わたしだったら,事情をくわしく聞きとって「そういうことなら」とでも応じてゆきたい気持ちがしますね。

わたしと同じ話を,たとえば研究者が持ち込んだらいったいどんな結果になるのでしょうか。「どなたでも無理」の言葉で通して,当然門前払いかな。それともその道の権威には弱いかな。

今回,改めて象糞紙を漉きたくて,同じ市にある象飼育施設に連絡。そこは民間で,象を含めてたくさんの動物を野外で放し飼いしているテーマパークです。施設管理責任者のSさんに事情を話すと,一発でOK! 「いつでも来てください。扱うのに衛生面の注意は必要ですが,必要分を融通しましょう。わたしたちも以前に象糞紙をつくった経緯があります。飼育象はアフリカゾウで,主な餌はチモシー・グラス,ペレット,果物です」とのこと。さすが! ついでに,ミュージアムで「『動物のウンコ』展ができないか,検討しているのですが」というと,Sさん,「協力できることがあれば,いくらでもしましょう」とまでいってくださって。

官民のちがいが,こんなかたちで現れようとは思いもしませんでした。頑固で形骸化した対応に終始する官,柔軟で客を大事にしようとする民,どちらが客足が伸びるか,一目瞭然でしょう。電話対応の心地よさがちがいます。経営手腕のセンスまでちがうように見えます。官は運営に税金を注げるところに安住し過ぎてきました。どうやら,そのツケが回ってきているようです。

じつは,野草紙づくりに取り組んできた自分のこと,子どもを対象にしてこの象糞で紙をつくらせてみたいのです。時期は夏休み。その前段階として予備的に紙をつくるのが今回の試み。チモシーが餌なら簡単に紙にできる見通しがつきます。できれば,ミュージアムボランティアの皆さん,関心のあるおとなの人もご一緒につくりたいと思っているところです。そして,実現可能ならいずれ『動物のウンコ展』も開きたいなあ。

下写真は,ずっと以前に『ウンコ展』で入手した象糞紙。ザンビアでつくられたものです。わたしの宝物でもあります。


というわけで明日,材料にするその象糞を受け取りに行きます。