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自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

アゲハ,孵化から蛹化へ,そして羽化へ(2)

2013-08-07 | アゲハ(ナミアゲハ)

その後,1個体はいつの間にか姿が見えなくなりました。残念! 残りの2個体は順調に育ちました。前蛹の数日前になるとすごい食欲だという記述に出合いましたが,そのとおり,今回はとくべつ印象に残るような食べっぷりでした。それで,前蛹期が近づいたなという予感がしました。

そして予感どおり,ある日の早朝2個体とも前蛹になっていました。一つはコップの縁で,もう一つは飼育箱の蓋で。孵化後,少なくとも 日と 時間が経っていました。同じ時間帯に別の葉で卵として生まれ,ほぼ同じ時間帯に孵化し,同じ時間帯に前蛹になったのです。もっとズレていてもおかしくはないのに,ほとんど一致するとは何ともふしぎな話です。

前蛹は一日以内に次の蛹に移行します。それで,たのしみにしてその瞬間を待つことにしました。

一つめの蛹化は午後7時にやって来ました。蓋に付いた個体です。皮を脱ぐ作業はたいへんな苦労が伴なうようで,筋肉の動きが生々しく伝わってくる中で,速やかに変化が訪れました。皮を落とすのに苦労しました。落ちたかどうかが,ちゃんとわかるしくみがあるようです。何かのセンサーがはたらいているのでしょう。落ちた途端に,動きが鈍くなったのには驚きます。

やがて,かたちが固まっていきました。

二つめはそれから2時間遅れて脱皮しました。こちらの方は,皮の落下まで実に滑らかな動きでした。

成長の進み具合がほぼ同時です。ほんとうにふしぎなくらいです。次は羽化に注目しておきましょう。10日後です。

 


アゲハ,自然界で見た脱皮

2013-08-02 | アゲハ(ナミアゲハ)

我が家の柑橘木スダチには,アゲハの幼虫がいくつか付いています。アゲハが度々飛来して産卵するので,幼虫がいなくなることはありません。

このスダチでたまたま脱皮を目撃。8月2日(金)のことです。そこを通りかかると,一枚の若葉の表面にいる幼虫が目に付きました。ただじっとしています。ふつうは目にとまっても,そのまま通り過ぎるのですが,ほんとうに偶然立ち止まりました。虫の知らせとでもいっていいのでしょうか。

すると,すぐに脱皮が始まったのです。大急ぎでポケットからカメラを取り出し,メガネをかけて撮影開始! 見る見るうちに皮を脱いでいきました。これはスゴイ!

飼育下なら見ることはありますが,自然界で見るのは初めてです。それだけのタイミングに恵まれないと,立ち合えないことは充分わかります。この点,今回の偶然はまったく“幸運”の一言に尽きます。

脱皮して終齢幼虫に変わりました。今から食欲が増して,間もなく蛹期を迎えます。人の目に触れない立ち木の片隅で,いのちのドラマが静かに進行していきます。

 


アゲハ,孵化から蛹化へ,そして羽化へ(1)

2013-07-26 | アゲハ(ナミアゲハ)

我が家のスダチでアゲハが産卵しているのを見届け,その卵を採集して来て孵化から観察しました。今回の卵は三個。こうした継続観察と撮影は何度も繰り返してきたことなので,要領は熟知しています。ただ,孵化や蛹化といった大変化の起こる時間は予想が付きますが,昼か夜か,勤務の日か,休みの日かで対応がすっかり違ってきます。

できれば,休みの昼間を希望したいのですが,自然事象のことなので,成り行きにこちらが合わせるほかありません。それが観察と写真撮影にはきびしい環境です。プロの写真家とはまったく異なる環境でもあります。

卵の孵化は,三個とも勤務日に起こりました。つまり,多少の時間のズレはありながらも一斉に孵化したというわけです。こういうことはほとんどありません。それで,職場の理解を得て被写体をわたしの机上に置き,大変化を撮影することにしました。

それが下写真のものです。

卵その1(午前9時39分撮影)。

卵その2(午後2時7分撮影)。

卵その3(午後2時47分撮影)。

このときは,周りの仲間にも状況を説明して見てもらいました。わたしの関心事について理解を得るチャンスでもあります。

この幼虫を飼って,今度は蛹化を待つことにしました。 

 


レモンにアゲハの幼虫(13)

2013-07-17 | アゲハ(ナミアゲハ)

6月10日付けの『レモンにアゲハの幼虫(11)』で取り上げた個体の,その後の話をしましょう。

蛹化後ちょうど11日目の朝。蛹が殻だけになっていたのです。「もう!?」。わたしはびっくり。ともかく無事に成虫が生まれたわけです。それで,辺りを探すと植木鉢に挿した竹に止まっていました。すでに翅が伸びていました。羽化後,時間が経っていたとみえます。それでも,まだ飛べる状態ではありませんでした。

それで,元の殻に付けて,写真を撮りました。殻の中には体液がたくさん残っています。

ときどき口吻を伸ばして,口の機能を点検しています。

個眼が並んでいます。からだはみごとな程に毛で覆われています。

肢の爪がしっかり殻をつかんで,からだを保持しています。前肢先には,食樹を確かめるブラシ状の毛は見当たりません。オスだと推定できます。

節足動物の特徴をしっかり備えたからだつきです。翅を広げると,はっきり夏型のオスだとわかりました。

午前10時。ゆっくり翅を動かし,大空に舞い上がっていきました。

 


アゲハの蛹の災難

2013-07-14 | アゲハ(ナミアゲハ)

これまで,アゲハの幼虫の成長を何匹か追ってきました。もちろん,飼育をとおしてです。そのうち,羽化に至れなかった事例がありました。貴重な記録として書きとどめておきます。

ナンテンの木の先で蛹になった個体があります。絵になる格好の場所で前蛹になり,蛹化しました。それで,羽化をうんとたのしみにしていました。 

ところが,成虫が生まれる気配がまったくなく,日が過ぎていったのです。「おかしいな」と思いつつ,そのままにしていました。ときどき見ていると,ある日,そのからだにごく小さなハチが一匹とまっていました。あまりにも小さいので,ルーペで確認しました。

ハチは逃げる気配がありません。もしかすると,寄生蜂なのかもしれません。そう思って,そのままにして観察を続けました。蛹のからだを調べたのですが,ハチが出てきたらしい穴はまったく見当たりませんでした。

ハチは数日,からだにとまっていました。数は増える様子がありません。ふつう,このくらいの大きさならもっとたくさんのハチがいてもおかしくありません。このアゲハの幼虫に複数の卵が産み付けられるっていうことは,ごくふつうにありうることです。しかし,たった一匹だし,先に書いたとおり穴がないのです。

そのままにしておくと,ハチは姿を消したり,また現れたりしました。

そして,次第にわたしはこの蛹のことを少しずつ忘れかけていました。そのうち色はすっかり褪せて,褐色に変わっていました。羽化は無理ではないかと思いかけていたある日,蛹を見て驚きました。帯糸の直近の場所にポッカリ穴が開いているのです。 

大急ぎでルーペを持ち出し,観察しました。その途端,もっと驚きました。成虫の目と肢が見えたからです。羽化寸前まで,からだの中ではいのちが続いていたことになります。なんということでしょう。 

ハチの影響があったのか,なかったのか,定かではありません。どんな事情があったのでしょうか。なんらかの災難に遭って,いのちが途絶えたことは確かです。 小さないのちの,大きな災難。この場面に立ち合って複雑な気持ちになったのでした。

 


アゲハの蛹化,その後

2013-07-11 | アゲハ(ナミアゲハ)

『アゲハの蛹化』(7月2日付け記事)のその後の経過について,書き記しておきましょう。

蛹化後,ちょうど3日が経った様子は下写真のとおりです。指を触れると,腹部が動きます。

 

上写真を撮ってから7日目の早朝,見ると羽化したばかりの成虫がぶら下がっていました。生々しい,ヨレヨレの翅です。慌てて一眼レフを準備。その間にも,翅が伸びていきました。

 

全身を写しました。

無事に成虫になれて,わたしとしてもホッとしたところです。 

 


アゲハの蛹化

2013-07-02 | アゲハ(ナミアゲハ)

サンショウの木にアゲハの終齢幼虫が一匹付いていました。枝のまま切りとって,水を入れたコップに挿しておくことにしました。

そのときから何回かあたらしいサンショウを入れて,観察を続けました。ついこの間,幼虫はその枝で前蛹になりました。

前蛹から蛹化までは24時間もかかりません。それで,だいたいの目安を付けて蛹化場面を記録写真に収めることにしました。今回は,このチャンスを逃したくないという気持ちが強くありました。木の枝のような自然物は,飼育箱のような人工物とちがって人の臭いがしません。自然のまま,です。わざとらしさがありません。それで,「これは何としてもきっちり記録しておきたい」と思ったのです。

午後6時15分。その頃まで,ほとんど目立った動きがなかったのですが,かすかに動きが見えかけました。

午後7時30分。 午後7時頃から規則正しい,筋肉の収縮・弛緩運動が始まりました。それにつれ,表皮に皺が目立ってきました。色はやや黄色みを帯びています。

午後8時17分。蛹のからだと,前蛹の表皮の間に隙間ができて,脱皮が始まる大きな動きが見えてきました。皮に皺ができてきました。 

 

午後8時35分。皮がどんどん後ろに送られるような感じで,皺が増えてきました。 

 

午後8時36分。頭部の背面が裂け,蛹のからだが見えかけました。皮の向こうには,蛹が透けて見えます。 

 

午後8時37分。皮が縦方向に裂けて,蛹がはっきり現れてきました。 

 

午後8時38分。蛹の肢,触覚が見えてきました。 

 

午後8時38分。皮が後ろ方向に送られ,蛹の腹部が見えてきました。 

 

午後8時39分。帯糸は上に移動。皮が尾端に達しました。さなぎは盛んに動きながら,それを落とそうとしました。 

 

午後8時40分。 皮が落ちていきました。

 

午後8時56分。 動きが収まり,無事を喜んでいるように見えます。

 

午後9時08分。 体節が引き締まりました。完全に蛹の基本形に移行。

 

この蛹化場面は,家族で見ながら撮影できました。それもまたよかったなあと思います。 

 


レモンにアゲハの幼虫(12)

2013-07-02 | アゲハ(ナミアゲハ)

『レモンにアゲハの幼虫(11)』で取り上げた個体のその後について記しておきましょう。

蛹になってから11日と18時間後。殻が透き通って,翅の紋様がはっきり見えます。腹の様子もくっきりうかがえます。「これは羽化直前だな」と直感。それで,記録のために写真を撮りました。

この日は出勤日。それで飼育箱ごと持って午前7時50分に自宅を出発。30分間のドライブ中にどうか羽化しないようにと願っていました。殻から出てくる瞬間を激写したかったのです。

ところが勤務先の駐車場に着いて箱を見ると,なんと羽化してしまっていました。翅がよれよれしています。残念ながら,期待していた場面を激写することは叶いませんでした。

 

たぶん,午前8時過ぎには羽化し終わっていたでしょうから,蛹期間は11日と19時間ということになります。ナミアゲハも同じです。個体差はあるものの,今の時期だと概ね12日目あたりが羽化日になることは確かです。

2時間ほどで翅がかたまってきました。成虫は,しきりに翅をばたつかせ,外に出ようとしました。もう大丈夫だろうと判断して,窓から放してやりました。大丈夫と見えて,舞い上がりました。

 


アゲハの孵化を追う(6)

2013-06-30 | アゲハ(ナミアゲハ)

佐々木崑さんの著書に『生命の誕生  ~昆虫・小動物の世界~』があります。初版は1978年(昭和53年)5月3日出版ですから,もう35年前の本です。昆虫を含めて身近な小動物の誕生とその直後の瞬間をとらえた労作で,わたしは管理職時代も含め,授業でずいぶん使わせていただきました。誕生物語がもうたっくさん,簡単な解説付きで取り上げられており,さらに写真が刺激的なのです。

例えば,カメムシやミミズ,ナメクジ,カタツムリ,テントウムシなどはわたしの目を引き付けてくれます。

この本を見るたびに,「こんなに没入できる世界にいられて,あたらしいいのちとふれ合うなんて,なんてすてきな生き方なのだろう」と思ったものです。足元にも及ばない話ですが,近頃のわたしは,なんだか佐々木さんのこころにすこし近づけたかなというような気がしています。

当時のカメラ・印刷技術と今のものとではずいぶんちがっていて当たり前です。しかし,今の感覚から見て画質は劣っていても,写真に賭ける熱・夢が見事に凝縮されているのです。

わたしはここのところ集中してアゲハ類の孵化を追ってきました。誕生の一瞬をとらえたいという夢を持ちながら。そんなひとコマをご紹介しましょう。

殻の一部を中から食い破って出てきます。

全身が出てきました。こんなからだが準備されていたのです。卵は直径1mm。

出終わると,幼虫は殻を食べます。

変化にはいのちの神秘がつきものです。見ていて,ちっとも飽きることはありません。佐々木さんに深謝。

 


アゲハの孵化を追う(5)

2013-06-29 | アゲハ(ナミアゲハ)

6月18日(火)午前8時20分。白い,透明感のある卵を透かして幼虫の動きが伝わってきます。 殻が食い破られ,頭が覗き始めました。

午前8時21分。からだ出るだけの穴が開くと,するするっという感じで実に滑らかな感じでからだを出し始めました。 

上写真をトリミングすると,穴とからだの大きさの比が見事なほどにわかります。 

午前8時21分。からだのほぼ全体が出終わりました。出始めてから,ほんの1,2分の出来事です。  

幼虫は,この後,殻を食べました。

小さな小さな世界の,いのちの躍動がここにはあります。