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自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

アゲハの蛹の災難

2013-07-14 | アゲハ(ナミアゲハ)

これまで,アゲハの幼虫の成長を何匹か追ってきました。もちろん,飼育をとおしてです。そのうち,羽化に至れなかった事例がありました。貴重な記録として書きとどめておきます。

ナンテンの木の先で蛹になった個体があります。絵になる格好の場所で前蛹になり,蛹化しました。それで,羽化をうんとたのしみにしていました。 

ところが,成虫が生まれる気配がまったくなく,日が過ぎていったのです。「おかしいな」と思いつつ,そのままにしていました。ときどき見ていると,ある日,そのからだにごく小さなハチが一匹とまっていました。あまりにも小さいので,ルーペで確認しました。

ハチは逃げる気配がありません。もしかすると,寄生蜂なのかもしれません。そう思って,そのままにして観察を続けました。蛹のからだを調べたのですが,ハチが出てきたらしい穴はまったく見当たりませんでした。

ハチは数日,からだにとまっていました。数は増える様子がありません。ふつう,このくらいの大きさならもっとたくさんのハチがいてもおかしくありません。このアゲハの幼虫に複数の卵が産み付けられるっていうことは,ごくふつうにありうることです。しかし,たった一匹だし,先に書いたとおり穴がないのです。

そのままにしておくと,ハチは姿を消したり,また現れたりしました。

そして,次第にわたしはこの蛹のことを少しずつ忘れかけていました。そのうち色はすっかり褪せて,褐色に変わっていました。羽化は無理ではないかと思いかけていたある日,蛹を見て驚きました。帯糸の直近の場所にポッカリ穴が開いているのです。 

大急ぎでルーペを持ち出し,観察しました。その途端,もっと驚きました。成虫の目と肢が見えたからです。羽化寸前まで,からだの中ではいのちが続いていたことになります。なんということでしょう。 

ハチの影響があったのか,なかったのか,定かではありません。どんな事情があったのでしょうか。なんらかの災難に遭って,いのちが途絶えたことは確かです。 小さないのちの,大きな災難。この場面に立ち合って複雑な気持ちになったのでした。

 


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