2018年の論文で、核酸の修飾が、転写に与える影響を調べています。
修飾核酸は、以下の図にある5種類で、新型コロナワクチンで使用されたN1-メチルシュードウリジンはありませんが、シュードウリジンに関して興味深い結果が得られています。
実験は、適当な配列のDNAをテンプレートとしてT7ベクターを作って、これを、T7RNAポリメラーゼでmRNAに転写し、この時、修飾核酸を使用して、mRNAに修飾核酸を取り入れています。
できたmRNAを、種々の逆転写酵素で逆転写してcDNAを生成、このcDNAをもう一度転写して、dsDNAを生成し、このdsDNAのエラーを調べています。
エラーは、T7RNAポリメラーゼによるmRNAをへの転写反応で起こるものと、
mRNAからcDNAへの逆転写で起こるものと、
cDNAからdsDNAを合成するときにおこるものの3種類があります。
例えばシュードウリジンの場合、
rA→rU/dT→dAというエラーが、未修飾のmRNAに比較して12倍となっています。
この実験では、cDNAのエラーをみているので、T7ポリメラーゼのエラーか逆転写のエラーかの区別はすぐにはつきませんので、rA→rU/dT→dAと示しています。
このエラーのrA→rUは、テンプレートのAから作ったmRNAのAがUに間違って転写されたということで、テンプレートの2本鎖DNAのマイナス鎖のTにU(シュードウリジン)が誤って会合してしまったということです。
dT→dAは、mRNAのAを逆転写するさいに、TではなくAに逆転写されたことを示しています。つまり、mRNAのAに、アデノシン(A)が会合してしまったということです。
実際には、この2つの可能性のひとつが起こっており、それは、エラーのパターンから判断し、シュードウリジンの場合は、T7RNAポリメラーゼによる転写反応でのエラーであることがわかりました。
これは、シュードウリジンの場合ですが、前回のブログで、N1-メチルシュードウリジンのエラーがシュードウリジンよりも一桁低い結果がでていましたが、DNAからRNAへの転写反応でのエラーは、産生されるタンパク質に多大な影響を及ぼすので、注視する必要があります。
特に、他の論文で、N1-メチルシュードウリジンが切断型の短いタンパク質を産生したという実験結果がありましたので、このエラーによって終止コドンが現れたのかどうかなどは考察するメリットがあると思いました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます