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葉月のブログ

命題:ウイルスの糖鎖はヒトの糖鎖と同一なので病因とはならない

N1-メチルシュードウリジンが、アデノシンと間違えられていることの考察

2023-11-10 | 編み物をしながら考えたこと

mRNAの品質検査法を開発している論文で、mRNAをcDNAに転写せずに直接ナノポアシークエンスする実験結果がありました。

ナノポアシークエンスでは、分子の電荷分布を測定し、経験的にどの核酸なのかを決定しているようです。


実験結果から、N1-メチルシュードウリジンで修飾すると、U(赤)がC(青)と間違えられていることがわかりましたが、グラフをよく見ると、実は、UがA(緑)と間違えられている箇所があることがわかります。

Aは、終止コドンUAA、UAG、UGAのすべてに含まれています。

修飾mRNAをタンパク質に翻訳する際、tRNAがmRNAのUをAと混同してしまったらどうなるでしょうか。

終止コドンUAA、UAG、UGAのAがUに変更された、UUU、UUG、UGUの3つのコドンが、終止コドンとしてふるまえることになります。

コドン表をみると、UUU→Phe/F、UUG→Leu/L、UGU→Cys/Cとなっていますので、mRNAがこれらのコドンを使用していると、そこで翻訳が終止され、切断型タンパク質となってしまいます。

前回のブログで紹介した論文で、N1-メチルシュードウリジン修飾mRNAから、20kDa付近と40kDa付近にタンパク質が観察されている結果がありました。



5-メチルシチジンとN1-メチルシュードウリジンの両方で修飾したmRNAでは、目的物よりも40kDa付近のタンパク質の方が多くなっています。このタンパク質は、5-メチルシチジンだけの修飾mRNAでは生成されないので、N1-メチルシュードウリジンとより強く関連していることが示唆されます。

シュードウリジンの塩基のピリミジンは、下記のように2つの構造の間を変換することが比較的容易です。



ウリジンでは、窒素の一つにリボース(糖)が結合しているので、ケト体が安定している可能性がありますが、シュードウリジンでは、リボースが炭素に結合しているのでより安定なエノール体が多く存在していると考えられます。N1-メチルシュードウリジンの場合は、Nの一つにメチル基があるので、ケトンのひとつだけがエノールとなっていると思われます。

N1-メチルシュードウリジンmRNAのナノポアシークエンスで、UがCに間違えられている結果は、この考察を支持しています。

次に、UがAに間違えられるのはどうしてかを考察してみます。


それぞれの核酸を、電気的に見てみると、上から下に
Gは、マイナス、プラス、プラス
Cは、プラス、マイナス、マイナス

Aは、プラス、マイナス、
Uは、マイナス、プラス、マイナス

となっていて、GとC、AとUがそれぞれ電気的に引き付けられるようにして、水素結合を形成しています。この場合、Uの3番目のマイナスは結合に使用されません。

シュードウリジンは、ケト体の場合は、ウリジンと同じですが、


上のケトン(C=O)がエノール体になると、プラス、マイナス、マイナスとなり、Gと水素結合を形成できることになります。

同時に、最初の2つのプラス、マイナスだけを使って、Aとしてふるまうことが可能なのかもしれません。

あるいは、もうすこし踏み込んで、分子軌道を考慮するともっと端的に説明できるかもしれません。

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