経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

(終盤はやや大袈裟な話になってきましたが、基本的には)電子書籍の紹介です。

2014-03-19 | 書籍を読む
 本日は、私がパートナーを務めている日本IT特許組合が最近出版した電子書籍のご紹介です。
 先進企業の特許に学ぶ アイデア・ヒント集 第1巻Google
 タイトルに「アイデア・ヒント集」とあるとおり、グーグルの特許戦略や今後の事業戦略を分析しようというものではなく、業界のリーディングカンパニーが考えているアイデアを特許から理解し、それをベースに新たな発想、それを超えるような発想を生み出していこう、ということを狙った書籍だそうで、なかなか面白い試みではないかと思います。

 初めて本格的に特許出願に取り組んでみたいという企業の仕事をさせていただくときには、その業界内で特許を出願している企業、特に日頃からライバルとして意識しているような企業の特許の内容を簡単に解説するところから始めることがあります。そうすると、それで特許になるのか、そんなやり方より自分だったらこうする、こうしたらもっといいものができる、といった方向に議論が展開していきやすいものです。これがまさに「アイデア・ヒント」としての特許であり、実はそうしたアイデアの創出を活性化する機能こそが、特許のもつ最も重要な力と言えるかもしれません。
 ‘知財’というと初めに制度論・法律論から入ることが多いので、特許権の効力で市場をコントロールしてライバルに勝つ、という教科書的なシナリオを基本に考えてしまいがちです。しかし、以前に「シェアの高さと特許の関係をどのように考えればよいのか」のエントリに書いたように、市場で顧客に選ばれるための基本は、特許権の力でライバルに対して優位に立つかどうかではなく、顧客が欲しいような製品を創り出すこと、開発で先行することにあるはずです。そう考えると、特許に取り組む意味について、特許でどう守るか、特許をどう使って市場をコントロールするかということだけでなく、特許への取組みを通じて開発を活性化させ、開発力をアップさせるという側面をもっと意識していくべきではないでしょうか。
 さらにいえば、特許を活かして勝つ、開発力で勝つ、といった市場でライバルと対峙して「勝つ」という意識も超え、市場で他者を引き寄せて自社の力に変えていけるような存在になること、それこそが複雑化する市場におけるこれからの企業の理想的なあり方ではないかと思います。最近読んでいる「知識創造経営のプリンシプル―賢慮資本主義の実践論」(深淵&難解なのでなかなか読み進みませんが)に、このような一節があります。
 「市場は単に企業の外的環境として捉えられるのではない。あるいは、企業は市場において単に利潤を追求し、競争しているのではない。このように、企業は市場という生態系の一部として存在するという考えがますます重視されるのが知識社会経済、そして知識創造経営である。・・・企業は重層的な知(知識や能力)の関係性の中に存在する。その中で、知識創造と知識資産の形成、価値への変換を行うのであり、顧客やパートナーなど周囲との関係性も引っくるめたのが企業なのである。企業と市場は知識創造経営においては主客未分の関係にあるといえる。」
 後段になると、近年嵌っている禅の世界、道元の思想に近いものを感じたりしますが、知財=対立という構図ばかりではなく、知の創出で市場の発展と一体化していくようなイメージも重要なのではないかと思います。特許の仕組みを使って新たな知を創出し、その知を活かして顧客やパートナーとのつながりを広げ、市場の創出・発展に貢献する。特許制度は、知の見える化、知のスパイラル的な発展に資するものであるはずですから。

先進企業の特許に学ぶ アイデア・ヒント集 第1巻Google
クリエーター情報なし
日本IT特許組合


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