経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

きたえた明細書は、強い。

2010-12-03 | 知財業界
 一昨日の続きですが、もう一つビジョンについて「グロービスMBA事業開発マネジメント」から。
やりたいこと、②求められていること、③できること
高い次元で融合させると、良いビジョンが生まれやすいとのことです。

 これを読んでいて思い出したのが、少し前ですが、ちょっとウルッときてしまったANAの「きたえた翼は、強い。」のCMです(で、このブログも飛行機が飛ぶ仕掛けにしてみたわけですが)。多くのお客様を乗せて空を飛び、世界中の人と人、仕事と仕事を結びつけたいという「やりたいこと」、その事業は多くのお客様が応援してくださる「求められていること」であること、そして様々な困難・苦労を乗り越えてきた、つまり「できること」をやり続けてきたということ、それが高次元で融合されたメッセージとして伝わってくるわけです。さらに、「この厳しい時代に立ち向かう一人ひとりの、いっそう頼もしい味方でありたい」というメッセージには、あぁこういう時代にこそ、自分が厳しくても顧客の厳しさに気を配れないといけないのだなぁ、と気づかされた次第です(冷静に考えてみると、今年度から機内に新聞はなくなったしコーヒーも有料になって、ちょっと頼りない味方になっとんのちゃうか、なんてところもありますが・・・)。
 やっぱり、社会にその存在感を示していくためには、自分がやりたいこと、今の仕事を始めた想いは明確に語ったほうがよい。けれども、それが独りよがりのものや、自分のスキルではできもしない夢物語になっていないか。あるいは、融合はしていても低い次元にまとまってしまっていないか。

 クライアントの想いが込められた知的財産に形をつけ、それが多くの顧客に届けられる橋渡しをしたい。
 この厳しい時代の中でも新しい事業に取り組む企業の、いっそう頼もしい味方でありたい。



 「きたえた明細書は、強い。」のCMでも作りますか(笑)。

グロービスMBA事業開発マネジメント
グロービス経営大学院 編著
ダイヤモンド社

ベクトルをどちらに向けるか

2010-11-11 | 知財業界
 一昨日、弁理士会近畿支部主催のセミナーで大阪に行き、支部の皆様とも色々お話をさせていただきました。思う存分大阪弁で話をして盛り上がってくると、ビックなことができそうな気になってくるのが何とも不思議なところです。
 さて、‘弁理士’云々について議論することは個人的にはあまり好まないのですが(∵弁理士というのは主体ではなく属性であり同一の主体として議論することには違和感を感じるので)、本日はちょっとばかり。
 近時、弁理士業(すなわち特許事務所業)の事業環境が厳しくなっていることについて、供給サイド、すなわち弁理士の数に原因を求める考え方を目に(耳に)することがあります。しかしながら、本来供給サイドを測る物差しは弁理士の数ではなく、特許事務所業界の就業者の数で見るべきでしょう。正確な数字を見たことがないので何とも言えませんが、その基準で見た場合に、弁理士の数ほど極端な変化が生じているのでしょうか。
 事業環境が厳しくなっている主な原因は、やはり需要サイドにあるように思います。しかしながら、ここで需要創出=出願増加と捉えるのはあまりに表層的であり、出願減少の原因の先にいる企業もまた、その先で深刻な需要減に悩んでいるわけです。そしてその需要減に悩む企業の先(顧客)には、さらに需要減に悩む企業があり・・・要するに、根っ子にあるのはスパイラル状に需要が減少していく日本経済にあるわけです。
 個々の事業者や業界がマクロレベルの問題をどうこうできるってわけではないので、そんな話をしてどうするんだ、って言われてしまうかもしれませんが、やはり問題の本質が解消されないことには本当の解決にも結びつかない。結局のところ、我々にできるのは日々の行動を積上げてことしかないのだから、事の本質がどこにあるのかということを頭におき、そのベクトルに従って進んでいかないと、中長期的に見て問題の解決にはつながらないはずだと思います。そして、知財の専門家である弁理士として何ができるかということを考えると、ゼロサムゲームの中でどっちが得した損したという世界ではなく、需要を生み、経済のパイを広げるようなビジネスの創出、拡大を支援するような動き方をしていきたい。つまり、会社の活力や創造力の強化につながる知財活動(7つの知財力の1~3)や、顧客やパートナーとの結びつきを強めることにつがなる知財活動(7つの知財力の6~7)が、こういう経済状況下ではより重要になってくるのであろう。中小企業の社長にお話を伺うと、殆ど例外なく「(自社が牽引する)業界の発展」「社員が能動的に仕事をすること」の重要性に言及されることからも、それが(経営レベルからの)顧客ニーズそのものではないかと思う今日この頃です。

愛知・神奈川・埼玉

2010-10-20 | 知財業界
 昨日の知的財産シンポジウム2010in横浜で、特許庁さんから以下のような興味深いデータが示されていましたのでご紹介しておきたいと思います。

特許出願件数上位5都道府県
 (1) 東京都  153,625
 (2) 大阪府   46,101
 (3) 愛知県   25,584
 (4) 神奈川県  15,923
 (5) 京都府   8,512
中小企業特許出願件数上位5都道府県 
 (1) 東京都   9,779
 (2) 愛知県   5,657
 (3) 大阪府   4,211
 (4) 神奈川県  1,943
 (5) 埼玉県   1,332
  (いずれも2009年実績,特許庁推計/特許庁普及支援課木村様の講演資料より引用)

 中小企業の出願件数は、中小企業基本法の定義に該当する企業の出願件数を積算したそうです。両方のランキングに表れる4都府県について、全出願件数に占める中小企業の出願件数を計算してみると、
 (1) 愛知県  22.1 %
 (2) 神奈川県 12.2 %
 (3) 大阪府   9.1 %
 (4) 東京都   6.4 %
となります。
 愛知が突出していますが(流石「知を愛する」県です)、神奈川も比較的高くなっています。そして、中小企業のほうだけランクインしている埼玉の比率を、特許行政年次報告書2010年版に開示されている全出願件数=3,992件から計算してみると、なんと愛知県を超える 33.4 % にもなります。
 この数字を見ていると、愛知、神奈川、埼玉で中小企業向けのサービスに注力して活躍されている弁理士の方が何名か思い浮かぶのですが、中小企業を意識するならば、実はこれらの地域を拠点に活動するのには合理性がある(逆にいえば東京・大阪を拠点にするのは比較的厳しい)、なんてことが言えるのかもしれません。

誰のパイを広げるか

2010-04-13 | 知財業界
 月刊誌「発明」の今月号に「企業における知財の意義」(またまたビックなテーマですが・・・)と題するインタビュー記事を掲載いただいたのですが、編集長のご厚意により、早々にPDFで公開させていただけることになりました。この春から知財担当となる方に向けてのメッセージ、といったコンセプトの企画ですので、該当しそうな方にはご一読をいただけると幸いです。

 話は変わりますが、2月~3月は中小企業の知財戦略関連プロジェクトの成果報告会で各地を訪問させていただきましたが、今年は残念ながら都合がつかず関東のシンポジウムに出席することができませんでした。参加された方のブログなどを拝見していると、今年はかなり‘コンサルティング’色が濃くなっていたようで、その点で私が関わった他の地域のシンポジウムとは雰囲気が異なっていたような印象です。対象が知財の実務周りから経営戦略にまで深化しているようで、それ自体は向かうべき方向に進んでいると思うのですが、‘コンサルティング’とかいった方法論が先行してしまわないかがちょっとばかり気になりました。提供者側の市場創出という側面のほうが前に出てきてしまうと、結局のところコストを負担するのは顧客ですから、そこに顧客のビジネスとサービス提供者のビジネスが対峙することになってしまうからです。勿論、そのサービスが顧客にとって価値のあるものであればWin-Winの関係が築けるので問題ないわけですが、知財の世界ではそんなに簡単に価値が顕在化するわけではないので、サービス提供者側の市場創造=「サービス提供者のパイを広げる」という色彩が強くなってしまうのはあまり好ましくないように思います。
 知財サービスを提供して業をなす者としては、「知財サービスのパイをどう広げるて収益を得るか」ではなく、「知財サービスを通じて顧客のパイをどう広げて収益の分配を受けるか」というアプローチ(要するにベンチャーキャピタルみたいな発想ですが)でやっていきたいとは常々思っているのですが、言うは易し行うは難し、ですね。

不可逆的な流れ

2009-09-03 | 知財業界
 昨日の日経・経済教室の御厨東大教授の「‘自民党的なる日本’が崩壊」という論説は、なかなか読みごたえのあるものでした。民主党か自民党かという表面的な結果だけでなく、政治家・官僚システム・財界がかみ合った間接給付型の仕組みを‘自民党的なるもの’と捉え、これを止めましょうというのが民意の本質であり、そこに直接給付型を提示した民主党が受け皿として嵌った、この‘自民党的なるもの’からの脱却は不可逆的であり、単純に二大政党間で揺り戻しあうような性質のものではない(=自民党再生には脱‘自民党的なるもの’が必要)、というのが論旨です。確かにそこを本質と捉えると、先の郵政選挙では、民意は「自民党による‘自民党的なるもの’からの決別」を支持したことになり、今回の総選挙を単純にドミノ現象と評してしまうのは表面的な分析に過ぎず、実は根底の部分で民意に大きな変化はない、と考えることができそうです。
 さて、ここからが主題なのですが、なんでこんな政治ネタを持ち出してきたかといいますと、この論説を読んでこんなことを考えました。社会現象として何らかの変化が見られた場合に、表面的な事象だけに囚われることなく、その奥で崩壊が進んでいる本質的なものは何かということを考え、揺り戻しがあり得るものと不可逆的な流れをしっかり選別しなければいけない。昨日届いた弁理士会からの定期便には、中小事業者向け資金繰り支援の制度融資のパンフレットが同封されていました。今年の特許や商標の出願件数は、ピーク時の3割減くらいの水準で推移しているようです。知財部の予算や人員が削られた、知財関係のセミナーに人が集まらない、という話も耳にします。こうした変化はたぶん、景気の波でそのうち揺り戻しがくるよ(多少はあるのでしょうが)、というような性質のものと捉えるべきものではなく、そこには不可逆的な流れがあって、おそらくこうした現象の裏側では‘特許事務所的なもの’とか‘特許部的なもの’というある種のシステムの崩壊が進んでいるのだと思います。崩壊が進んでいるものの本質は‘特許事務所’ではなく‘特許事務所的なもの’、というこの微妙な違いがたぶん重要なところで、‘特許事務所的なもの’や‘特許部的なもの’に変わる新しい価値観を認識し、それを仕組みにしていくことが、知財業界のプレーヤーに求められているということなのでしょう。「経営課題に成果を上げる」というのも、たぶんその価値観の一つと位置付けられると思います。抽象的な話になってしまいましたが、とりあえず今日はこんなところで。

やはり知財ビジネスの基本は人間が働くコツコツ系か

2009-06-19 | 知財業界
 以前のエントリで‘知財ビジネス’を、①人間が働くビジネス、②お金が働くビジネス、③仕組が働くビジネス、に分類してみたりしましたが、②に分類したJDC信託について、こんな記事が出ていました。顧客からの知財に投資するために預かったお金を自社の借金の返済に流用した、ってことですから、金融機関としてはまずあり得ない話で、これは殆ど致命的ともなりかねない印象です。そういえば、JDC信託の決算が大変だというエントリを書いたこともありましたが、要するに既に破綻状態にあったのを、信託財産を流用して繋いでいたということのようです。それにしても、民事再生となったiPBは主要サービスの営業権が譲渡されたようで、カテゴリ②のメインプレイヤーはいずれも大変なことになってしまいました。個別企業の問題といえばそれまでかもしれませんが、知財とお金はあまり相性がよくないのか・・・やっぱり、知財ビジネスの基本は人間が働くコツコツ系、ってことでしょうか。
 その一方で、大新聞にこんなアバウトなコラムがあったりして(「第一線で活躍している経済人、学者」が書かれているそうですが・・・)、変に期待を煽るような記事はもういいので、メディアには厳しい事実を含めた現状分析を期待したいものです。

パテントサロンに表れる世相

2009-02-10 | 知財業界
 一昨日(日曜)の日経を見てちょっと驚いたのですが、求人広告が殆ど掲載されていません。日曜の日経といえば、これまでなら4~5ページは求人広告で埋め尽くされ、他のページの広告欄にも割り込んでいるくらいが普通だったのですが、僅かに掲載されていたのも公的な機関ばかりで、今の経済状況がいかに劣悪であるかを痛感します。
 そんなことを思っていたら、徒然知財時々日記さんのブログによると不況時にはメーカーから特許事務所に人が動きやすく、特許事務所の求人は衰えていないようにみえるとのこと。確かに、パテントサロンの求人スクエアには、今月に入ってからも結構な数の求人広告が新たに掲載されているようで、少々大袈裟ですが別世界の感すらあります。この違いの理由は何なのでしょうか。
 (A説) 特許事務所業界の景気は、他産業の景気に遅行する。
 (B説) 不況期だからこそ、企業が差別化のために知財活動に力を入れている。
 (C説) 採用がしやすい時期を狙って、特許事務所が先行投資として人員採用を強化している。
 (D説) 企業が固定費削減のために知財業務の外注比率を増やしている。
 (E説) 年度末の駆け込み案件を消化するために、とりあえず人が足りない。
 どれもいま一つピンとこない感じというか、いずれにせよ自分には実感がないのでよくわかりませんが・・・
 そして、最近のパテントサロンでもう一つ気づいたこと。セミナー・イベントの新着情報に、「もうかる」「不況を乗り切る」などキャッチーなタイトルが目立ち始めました。漢方薬系である知財に、即効性はあまり期待できないようにも思えますが・・・

サービスの「価値」と「価格」

2009-01-12 | 知財業界
 GLOBIS.JPに、「マーケティングの泉 第8回 ブランド、サービスの価格を最大化する“プラットフォーム価値”(1)」というコラムが掲載されていますが、サービス業に携わる者にはなかなか興味深い内容です。サービスの「価値」と「価格」がテーマとなっていますが、提供者側からは原価積上げ式で考えがちなサービスの「価格」について、顧客からみるとそのサービスによって「自分が受け取れる価値」=「価格」である、その顧客が受け取るサービスの「価値」を的確に把握してサービスの「価格」を設定することが肝要、ということが結論になってきそうな感じです(コラムの続編を待たないと明らかではありませんが・・・)。
 この話を我々のような代理人業務に適用すると、いろいろな事例についての議論が展開しそうですが(クライアントである出願人は何を「価値」と考えているのか、廃止された標準報酬額表はどういう意味(提供者側の考える「価値」?)をもっていたのか、代理人報酬の値下げをどのよに考えるのか(出願人がそれだけの「価値」を受け取っていないと感じているということか)、コンサルティングなどの非代理人業務はどのような「価値」を提供できるのかetc.)、個別のケースによってかなり異なる話になってきそうなのでここでは置いておくとして、このコラムにあるミスドの値下に関する分析(厳密には商品の価格の例ですが)が興味深いです。ミスドに対して顧客が感じている価値を「スタバよりも手軽に楽しめる、甘くておいしいお菓子とコーヒーのひととき」と認識し、であればドーナツのサイズを小さくしても本質的な価値が損なわれることない、サイズを小さくした分を価格の引き下げに充てるという、世にある多くの値下げとは一線を画した戦略的かつ能動的な価格設定としての値下げと分析されています。我々知財サービスに携わる者も、何時間かかったからいくら、いままで類似のサービスが何円だからいくら、といった提供者側の事情だけでなく(もちろんこれらも原価管理上必要な要素ではありますが)、「クライアントが感じている本質的な価値とは何か」というところを、もっと意識していくことが必要なのでしょう。

新版MBAマーケティング
グロービス・マネジメント・インスティテュート
ダイヤモンド社

このアイテムの詳細を見る

イタリアンスパゲティ

2008-12-07 | 知財業界
 一昨日、京滋知的財産権協議会様・京都発明協会様の合同特別セミナーで「企業に活力を与えるための知的財産戦略」と題してお話をさせていただきました。京都、滋賀にある企業の知財担当の方が定期的に集まられる会とのことですが、知財協さんをはじめ、企業間の機能横断的な交流が盛んなところは他にない知財分野の特徴です。そうした中で、「知財の仕事でどうやって企業にガツンと活力を与えられるか?」というお題をいただきました。
 で、セミナー本番では、関西に行くとついつい余談が多くなって時間が押してしまうもので、大事なレジュメの最後(本の宣伝部分を除く)のページをすっ飛ばしてしまいました。ここに書いたことは、
■ 知財分野の美辞麗句に酔うことなく、何がどう機能して、何に役に立つのかを十分に整理して考える。
■ 「経営課題」→「知財活動」→「課題解決」というループを作る。
■ 「知的財産権」は、「財産」というより、課題解決のために利用できる「道具」である。
■ 「道具」の使い方は、業界、事業環境によりケースバイケース。どのように利用するべきか、各々の現場で考え抜くしかない
■ 何よりも重要なのは、実践する仕組みを作り、実践すること
でしたが、要するに、外野席から‘事業戦略に即した知財戦略’だ‘三位一体’だなんていうことは簡単だ。そんなこと言われなくてもわかっていて、それをどうやって実践するかが一番難しい部分である(特に組織が大きくなり関係者が増えるに従って)。それを一つ一つ解きほぐして、実現可能な仕組みを作って回していくことが知財戦略の‘実践’であり、その役割は知財実務を知る者にしか担えない、我々が「知財活動→企業価値向上」のシナリオを実現していかなければならない、というのがここでのメッセージです。外野席から知財を見ていた私自身も、そう思って知財実務の世界に足を踏み入れてきたわけですから、これはキレイごとでもおべんちゃらでもありません。
 ところで、今回の会場は月桂冠大倉記念館というとても趣のある場所で、ホテルや貸会議室でやるセミナーとは違う雰囲気で、いい感じでした。さすが、京都です。

注)タイトル&写真はセミナー前の腹ごしらえで、本文とは関係ありません。

資格は成り金か?

2008-11-16 | 知財業界
 先般、諸事情により流れてしまった講演用に準備していたレジュメ(抜粋)をアップします(→レジュメはこちらをクリック)。テーマはビジネスキャリアと弁理士資格について。このブログにも何度か書きましたが(その1その2)、弁理士資格とはその人の属性の1つであって、主体になる性質のものではないのではないか、というのが主題です。

<P.1> 弁理士資格の取得を目指している人は「弁理士になりたい」のか、それとも「弁理士の資格をとりたい」と考えているのか。既に資格を得ている人は、「弁理士になりたい」と思っていたか、それとも「弁理士の資格をとりたい」と思っていたか。この意識の違いには、実は大きな意味があるのではないか。
<P.2> つまり、自分が将棋の成り金のように弁理士に化けるのか。それとも、自分はそのままで弁理士資格という1つの道具を手に入れるのか。
<P.3> 言い換えれば、あたかも会社に就職するように弁理士というグループに仲間入りするのか、それとも弁理士資格という同じ道具を持っていてもそれぞれは全く別個の主体なのか。
<P.4> で、巷で弁理士についてあれこれ言われるときには、前者のように弁理士が主体として語られていることが少なくない。でも、これってなんか変な議論ではないか、と違和感がある。弁理士って、そもそも主体ではなく、属性なのではないか。
<P.5> 主体になるのは「弁理士」ではなく、「~さん」「~事務所」「~社」であるはず。
<P.6> ところで、自らが提供する商品やサービスについて、「相対思考」と「絶対思考」の2つの見方がある。「相対思考」は同じ枠内で括った商品やサービスの中で他との違いや優位性を考えるが、「絶対思考」は常識に囚われずそもそもどういう商品やサービスを提供すべきから考える。
<P.7> 弁理士を主体と考えれば、弁理士という常識で括った枠内で仕事のあり方を考えるので、必然的に同質化し、思考は相対化する。一方、弁理士を属性の1つと捉えれば、弁理士とはこういうものという固定観念に囚われることなく、弁理士という道具やそれによって得た知識やスキルを活かしながら何ができるのか、思考は絶対化して選択肢も多様化する。
<P.8> すなわち、弁理士資格を属性の1つと捉えることによって、各々のバックグランドを活かした多様なビジネスパーソンが生まれるのではないか。相対思考に陥っていてはコップの中の争いが激しくなるだけで、サービスの質が劇的に変化することはない。
<P.9> 見方を変えると、ビジネスパーソンとしてのアイデンティティがないままに資格に拘ると、弁理士が主体化し、同質化が進んで相対思考に陥りやすくなる。自らのアイデンティティが確立されていれば、資格の活かし方も多様になり、絶対思考によって新しい良質なサービスが生まれる可能性が高まるはず。
<P.10> たとえば、専門分野の深堀り、専門分野の拡大といった二次元の枠内の進化だけでなく、これらの業務を事業活動と融合させるという三次元的な進化のためには、各々のアイデンティティに基づく絶対思考が必要になってくる。この領域は、相対思考の延長線上で進化していく性質のものではない。たぶん。

とレジュメに沿って説明してみたものの、これではなんだか抽象的でよくわからないですかね。