ある事業の関係で、2006年度の地域中小企業知的財産戦略支援事業で㈱ブライナさんが支援された㈱フィーサさんの事例(「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」の58-64p.)について調べる機会がありました。同社は、プラスチック射出成型ノズルの市場をリードする技術志向型の中小企業です。雑誌・発明の2011年2月号に同社の斎藤社長のインタビューが掲載されているのですが、以下の部分を非常に興味深く読みました。
まず、支援を受ける前の「知財」の位置付けについて、次のように答えられています。
「『他社にまねされたら困る』。そのための知財という認識でした。」
そして、地域中小企業知的財産戦略支援事業における支援では、PDCAサイクルを意識しながら、経営者・部門長・開発者・企画室が連携した知財活動のワークフローが整備されます(「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」の62p.)。これによって、同社の知財活動は全社一体の組織的な取組みとなり、現在の知財に対する考え方について、斎藤社長は次のように答えられています。
「当社の場合、特許だけでなく、ノウハウや商標も含め、知財を『ブランド力』として営業ツール的に活用しています。」
「カタログ等でも製品名に®(登録商標のRマーク)を付けることを徹底したり、営業でも『これは当社の特許技術です』ということを必ずクライアントに伝えるように心がけています。」
「知財のない企業には、営業のプライドも育ちません。」
「知財は当社のプライドでもあると現在は考えています。さらに知財は、企業の根幹であり、やる気の根幹だと思います。」
「特許の存在によって、ビジネスの根幹がしっかりしてくると、営業もしやすくなります。同時に、社内のモチベーションも上がって、発想力が強化されてくるのです。」
「営業部門が自信を持って活動するには、技術(知財)による裏付けが欠かせないのです。」
これを読んでいて思い出したのが、知的財産経営プランニングブック58p.に掲載されているテンパール工業㈱さんでお聞きした話です。同社はブレーカ、分電盤の市場で長年にわたり大手電機メーカーと堂々と渡り合っていますが、知財(特許)でもしっかり成果を上げていくことは「営業も含めて社内の士気にかかわる問題だ」とのお話がありました。さらに、特許によって会社の未来を示す㈱昭和さん、知財活動で社員のやる気を引き出す㈱しのはらプレスサービスさんなどのお話も思い出されます。
規模や資金力は中小企業にとってハンデとなるものですが、それを逆に強みとして活かすためには、ランチェスター戦略みたいな話になってきますが、「この分野では我々が最先端、No.1である」とメンバーの意識を一つの方向に集約させ、特定の分野における推進力を強めることが必要になります。そのときに、「この分野では我々が最先端、No.1である」という裏付けとして役立つのが、他との違いを客観的に明らかにできる知的財産であり、だからこそ、知財は「会社のプライド」を支える存在として、この経営戦略において重要な要素になってくるわけです。逆に言えば、自社のプライドと関わりのない知財を活用(=売却やライセンス)して収入が得られたり、資金が調達できたりしたとしても、それは会社の本質的な強さを支えることにはならない。特許訴訟で勝利するにしても、休眠特許を‘活用’してお金が入るのと、自社の事業の根幹となる部分の模倣を排除するのとでは、全く意味が違ってくるということだと思います。
こうした「会社のプライド」を支えるという知財の位置付けは、ランチェスター戦略的な中小企業ならではの経営戦略と一体化したものなので、大企業の知財活動からはピンときにくい部分があるかもしれません。大企業の場合、他の部分でいろいろプライドが支えられているケースが多いでしょうし。
また、重要なのは「この分野では我々が最先端、No.1である」ことを裏付けるということなので、当然ながら「会社のプライド」を支えるものは知的財産でなけれなならないというものではありません。業界内で高い評価を得ること、表彰を受けたこと、社長が各所で引っ張りダコであること、業界誌などによくとりあげられること、商売だけでなく社会貢献にも熱心であることなど、何らかのプライドの裏付けとなるものがあるかどうかという問題です。
そんなことを考えていたところに、直木賞受賞&鮫島先生がモデルとなっている弁護士が登場するということで早速手にとってみた「下町ロケット」ですが、まさに「会社のプライド」としての特許の存在が見事に描き出されていました。こんなに入り込んで読んだ本は、ホント久しぶり。Strong BUY です。
まず、支援を受ける前の「知財」の位置付けについて、次のように答えられています。
「『他社にまねされたら困る』。そのための知財という認識でした。」
そして、地域中小企業知的財産戦略支援事業における支援では、PDCAサイクルを意識しながら、経営者・部門長・開発者・企画室が連携した知財活動のワークフローが整備されます(「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」の62p.)。これによって、同社の知財活動は全社一体の組織的な取組みとなり、現在の知財に対する考え方について、斎藤社長は次のように答えられています。
「当社の場合、特許だけでなく、ノウハウや商標も含め、知財を『ブランド力』として営業ツール的に活用しています。」
「カタログ等でも製品名に®(登録商標のRマーク)を付けることを徹底したり、営業でも『これは当社の特許技術です』ということを必ずクライアントに伝えるように心がけています。」
「知財のない企業には、営業のプライドも育ちません。」
「知財は当社のプライドでもあると現在は考えています。さらに知財は、企業の根幹であり、やる気の根幹だと思います。」
「特許の存在によって、ビジネスの根幹がしっかりしてくると、営業もしやすくなります。同時に、社内のモチベーションも上がって、発想力が強化されてくるのです。」
「営業部門が自信を持って活動するには、技術(知財)による裏付けが欠かせないのです。」
これを読んでいて思い出したのが、知的財産経営プランニングブック58p.に掲載されているテンパール工業㈱さんでお聞きした話です。同社はブレーカ、分電盤の市場で長年にわたり大手電機メーカーと堂々と渡り合っていますが、知財(特許)でもしっかり成果を上げていくことは「営業も含めて社内の士気にかかわる問題だ」とのお話がありました。さらに、特許によって会社の未来を示す㈱昭和さん、知財活動で社員のやる気を引き出す㈱しのはらプレスサービスさんなどのお話も思い出されます。
規模や資金力は中小企業にとってハンデとなるものですが、それを逆に強みとして活かすためには、ランチェスター戦略みたいな話になってきますが、「この分野では我々が最先端、No.1である」とメンバーの意識を一つの方向に集約させ、特定の分野における推進力を強めることが必要になります。そのときに、「この分野では我々が最先端、No.1である」という裏付けとして役立つのが、他との違いを客観的に明らかにできる知的財産であり、だからこそ、知財は「会社のプライド」を支える存在として、この経営戦略において重要な要素になってくるわけです。逆に言えば、自社のプライドと関わりのない知財を活用(=売却やライセンス)して収入が得られたり、資金が調達できたりしたとしても、それは会社の本質的な強さを支えることにはならない。特許訴訟で勝利するにしても、休眠特許を‘活用’してお金が入るのと、自社の事業の根幹となる部分の模倣を排除するのとでは、全く意味が違ってくるということだと思います。
こうした「会社のプライド」を支えるという知財の位置付けは、ランチェスター戦略的な中小企業ならではの経営戦略と一体化したものなので、大企業の知財活動からはピンときにくい部分があるかもしれません。大企業の場合、他の部分でいろいろプライドが支えられているケースが多いでしょうし。
また、重要なのは「この分野では我々が最先端、No.1である」ことを裏付けるということなので、当然ながら「会社のプライド」を支えるものは知的財産でなけれなならないというものではありません。業界内で高い評価を得ること、表彰を受けたこと、社長が各所で引っ張りダコであること、業界誌などによくとりあげられること、商売だけでなく社会貢献にも熱心であることなど、何らかのプライドの裏付けとなるものがあるかどうかという問題です。
そんなことを考えていたところに、直木賞受賞&鮫島先生がモデルとなっている弁護士が登場するということで早速手にとってみた「下町ロケット」ですが、まさに「会社のプライド」としての特許の存在が見事に描き出されていました。こんなに入り込んで読んだ本は、ホント久しぶり。Strong BUY です。
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