経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

中小企業の知財と金融機関

2012-09-17 | 書籍を読む
 最近の地域金融機関において、中小企業について何が主要なテーマになっているのかということを知っておきたく、「そこが知りたい金融円滑化の出口戦略」を読みました。
 その中に、少々興味深い数字が。全国にある中小企業の数は400万社強、このうち1割強に当たる約45万社が金融円滑化法に基づく貸付条件の変更を受けているそうです。

 一方、この本に出てくる数字ではありませんが、全国の中小企業による特許出願件数は年間3~4万件程度と推測されます。1社で複数件出願する企業も存在していることを考えると、1年に1件以上の特許を出願する中小企業の数は、1~2万社程度といったところでしょうか。
 つまり、1年に1件でも特許を出願する中小企業数が中小企業総数に占める比率は、0.3~0.4%くらいという計算になります。
 以前、ある信用金庫の方が、「取引先の中小企業さんに特許といっても、関係のある企業が1%もあるかどうか…」といったお話をされていた記憶があるのですが、なるほど、これは実態に近い数字であるとみてよさそうです。

 この2つの数字を比べてみると、年に1件以上の特許出願を行う企業の数に対して、円滑化法による条件変更の対象企業数は30~40倍くらいとなります。
 こうやって考えると、一般に「特許」からイメージされるような「知財」に対して、地域金融機関からの関心がなかなか集まらないのも、当然といえば当然です。

 その一方で、地域金融機関の活動に知財を絡められそうな可能性も少し見えてきました。
 貸付条件の変更や財務リストラによって企業が当面存続し得るとしても、結局のところ売上が先細りでは生き残ることができません。そこでこの本の中にも、売上拡大のために、地域金融機関は販売力・営業力強化のための支援機能を強化する必要がある、と述べられています。
 こうした支援の具体策というと、顧客や提携先の紹介、ビジネスマッチングフェアの開催などの手法が一般的ですが、単なる紹介やマッチングだけでなく、そこに「結局は売上」のエントリに書いたような、売上拡大を意識した‘攻めの知財戦略’の支援をかませると、結構面白いことができるのではないでしょうか。
 知財は重要だ、価値評価だ、担保だ、とこちら側の理屈を唱えるばかりでは物事はなかなか動かないので、金融機関が関心の高いテーマに知財をどう絡めることができるか。たぶんそこが重要なところです。いずれにしても「出口戦略」の後の話にはなりますが。

Q&Aそこが知りたい金融円滑化の出口戦略
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きんざい

インタビュー記事掲載のお知らせ

2012-09-04 | お知らせ
 本日は、月刊「発明」9月号に掲載されたインタビュー記事のお知らせです。
  中小企業の知的財産でニッポンを再生!
 9-10月号の連載で、9月号が前篇となります。インタビュー記事の部分のPDFファイルを下記リンクに公開していますので、ご笑覧いただけると幸いです。
  http://www.ipv.jp/images/archives/invention1209.pdf

THE INVENTION (ザ インベンション) 発明 2012年 09月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
発明協会


<その他のお知らせ>
1. 10月から開催される「あいち知財経営塾」の講師を務めます。第2回以降は5社程度にご参加いただいての‘塾’形式になりますが、10月10日(水)の第1回は公開セミナーですので、お近くの方は是非ご参加ください。
 愛知県ホームページ~「あいち知財経営塾」の参加者を募集します!

2. 9月10日(相模原市) 戦略的知財マネジメント促進事業 知的財産セミナー で、「会社を元気にする知財の力~始めよう・見直そう 中小企業の知財活動~」と題して、中小企業の経営者や知財担当者、中小企業支援者の皆様を対象にしたお話をさせていただきます。

3. 9月25日(秋田市) 秋田県発明協会 知財人材育成セミナー で、「知的財産の力を経営に活かそう!~中小企業の事例に学ぶ会社を元気にする秘訣~」と題して、中小企業の経営者や知財担当者、中小企業支援者の皆様を対象にしたお話をさせていただきます。

4. ‘経営に効く7つの知財力’のFacebookページ に、‘ネジザウルスGT’で有名なエンジニアの高崎社長へのインタビューを‘7つの知財力’的に分析したノートをアップしていますので、ぜひご覧ください。