昨日は‘Let’s IPO Seminar’に参加して、IPOマーケットに関するホットな話を聞いてきました。
この‘LET'S IPO’のサイトでは、私も時々コラムを書かせていただいています。
■第七回■知的財産を活かした成長戦略
■第十四回■中小ベンチャー企業を対象とした特許料等の軽減措置について
ピーク時の2000年に203社あったIPOは、リーマンショックのあった2009年に19件まで落ち込み、そこからは回復傾向が続いて2013年は54社。今年は70社程度の見込みとのことですが、それでも100社にも満たない件数です。
よく中小企業向けの知財セミナーで、全国の中小企業の数は約400万社、その中でも1年に1件でも特許を出している会社は1万社程度(諸々のデータからの推測ですが)しかないんですよ、というお話をさせていただいていますが、それと比べてもIPOの数はなんと少ないことでしょうか。その稀少な会社を発掘してサポートするベンチャーキャピタルというのは、改めて難しい仕事だと思う次第です。
このセミナーには『IPO企業にみる成長企業のビジネスモデル』という新興市場に上場したベンチャー企業のビジネスモデルを分析する企画があるのですが、久しぶりにベンチャー投資を担当していた頃のような頭の使い方ができて刺激的でした。フリーディスカッションで「確かに業界では一人勝ちのいい会社だけど、成長のシナリオが見えず投資対象としての興味が湧かない」といった意見を聞くと、ベンチャー投資の世界ならではの価値判断を思い出します。
昨日の分析対象は‘口コミサイト’の勝ち組で、広告収入を主体としたビジネスモデルで成長している会社でした。しかし、特定の業界の広告収入に依存するだけではいずれ成長の限界に突き当たるので、次にどのような形で成長シナリオを描けばよいのかが問題になります。いくつかの勝ち組の‘口コミサイト’の例を見ると、(1) 川上(=口コミ情報を活かしたメーカーとの共同開発)に向かう、(2) 川下(=口コミ対象の商品を販売する小売業)に向かう、(3) 他の分野の口コミサイトにも展開する、の3パターンがあるとの分析が示されましたが、どれが最も理にかなった戦略なのでしょうか。
こうした場面では、せっかくなので知財屋ならではの見方をしてみたいところです。その会社ならではの強み、つまり、成功している‘口コミサイト’にしかない独自性のある経営資源は何なのか。どの方向に進めば、最も模倣しにくいビジネスを構築できるのか。
口コミというリアルな、それも大量の、かつ何らかの格付けがされた情報を強みと捉えるならば、それを活かしてオリジナルの商品を開発する (1) が合理的であるように思えます。個々の商品のオリジナリティだけでなく、新しい口コミを次々と商品のアイデアに活かしていくことは、勝ち組の口コミサイトにしかできないはずです。
口コミという情報自体より、口コミを集める様々な仕組み・ノウハウを強みと捉えるならば、(3) が合理的ということになるでしょう。成功した仕組みやノウハウを再利用すれば、他が追随できないスピードで事業を展開できるはずです。
そうやって考えていくと、一番険しい道に思えるのが、(2) の戦略です。口コミの情報に価値があるならば、ユーザはこのサイトで情報だけをいただいて、最も安いところで商品を購入すればよいことになります。口コミを集める仕組みやノウハウが活かされるわけでもないので、ウィングを広げようとしている部分には、その会社でなければならない必然性が見出し難く、模倣容易性が高くなってしまうように思います。
勿論、戦略の意思決定はこうした切り口だけで行えるものではありませんが、知財屋としての思考回路・発想法をこんな場面にも活かしていきたいものです。
この‘LET'S IPO’のサイトでは、私も時々コラムを書かせていただいています。
■第七回■知的財産を活かした成長戦略
■第十四回■中小ベンチャー企業を対象とした特許料等の軽減措置について
ピーク時の2000年に203社あったIPOは、リーマンショックのあった2009年に19件まで落ち込み、そこからは回復傾向が続いて2013年は54社。今年は70社程度の見込みとのことですが、それでも100社にも満たない件数です。
よく中小企業向けの知財セミナーで、全国の中小企業の数は約400万社、その中でも1年に1件でも特許を出している会社は1万社程度(諸々のデータからの推測ですが)しかないんですよ、というお話をさせていただいていますが、それと比べてもIPOの数はなんと少ないことでしょうか。その稀少な会社を発掘してサポートするベンチャーキャピタルというのは、改めて難しい仕事だと思う次第です。
このセミナーには『IPO企業にみる成長企業のビジネスモデル』という新興市場に上場したベンチャー企業のビジネスモデルを分析する企画があるのですが、久しぶりにベンチャー投資を担当していた頃のような頭の使い方ができて刺激的でした。フリーディスカッションで「確かに業界では一人勝ちのいい会社だけど、成長のシナリオが見えず投資対象としての興味が湧かない」といった意見を聞くと、ベンチャー投資の世界ならではの価値判断を思い出します。
昨日の分析対象は‘口コミサイト’の勝ち組で、広告収入を主体としたビジネスモデルで成長している会社でした。しかし、特定の業界の広告収入に依存するだけではいずれ成長の限界に突き当たるので、次にどのような形で成長シナリオを描けばよいのかが問題になります。いくつかの勝ち組の‘口コミサイト’の例を見ると、(1) 川上(=口コミ情報を活かしたメーカーとの共同開発)に向かう、(2) 川下(=口コミ対象の商品を販売する小売業)に向かう、(3) 他の分野の口コミサイトにも展開する、の3パターンがあるとの分析が示されましたが、どれが最も理にかなった戦略なのでしょうか。
こうした場面では、せっかくなので知財屋ならではの見方をしてみたいところです。その会社ならではの強み、つまり、成功している‘口コミサイト’にしかない独自性のある経営資源は何なのか。どの方向に進めば、最も模倣しにくいビジネスを構築できるのか。
口コミというリアルな、それも大量の、かつ何らかの格付けがされた情報を強みと捉えるならば、それを活かしてオリジナルの商品を開発する (1) が合理的であるように思えます。個々の商品のオリジナリティだけでなく、新しい口コミを次々と商品のアイデアに活かしていくことは、勝ち組の口コミサイトにしかできないはずです。
口コミという情報自体より、口コミを集める様々な仕組み・ノウハウを強みと捉えるならば、(3) が合理的ということになるでしょう。成功した仕組みやノウハウを再利用すれば、他が追随できないスピードで事業を展開できるはずです。
そうやって考えていくと、一番険しい道に思えるのが、(2) の戦略です。口コミの情報に価値があるならば、ユーザはこのサイトで情報だけをいただいて、最も安いところで商品を購入すればよいことになります。口コミを集める仕組みやノウハウが活かされるわけでもないので、ウィングを広げようとしている部分には、その会社でなければならない必然性が見出し難く、模倣容易性が高くなってしまうように思います。
勿論、戦略の意思決定はこうした切り口だけで行えるものではありませんが、知財屋としての思考回路・発想法をこんな場面にも活かしていきたいものです。