経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

「テレビ電話ができます」では足りない。

2011-12-25 | 書籍を読む
 すでに読まれた方も多いかと思いますが、本日は‘スティーブ・ジョブズ II’から一つ。iPadのコマーシャルに関する話です(330p.)。

 iPadのコマーシャルはいずれも機器が主役ではなく、「iPadを使ってなにができるのか」がテーマだった。実際、iPadが成功したのはハードウェアが美しかったからだけでなく、いろいろと楽しめる「アプリ」と呼ばれるソフトウェアがあったからでもある。・・・

 少し前だったかと思いますが、孫が誕生日にケーキの上のろうそくを吹く場に、FaceTimeを使って遠くにいる祖父母があたかも一緒にいるかのようにその場に参加できる、みたいなテレビCMが放送されていました。確かに一般的な多くのユーザーからみると、CPUとか解像度とかハードウェアのスペックがどうこうといった説明はどうでもいいことで、それを使って何ができるのか、どんないいことがあるのか、が最も関心のあるところです。
 前回のエントリに書いた3原則のうちの1つ、「‘知的財産権’でなく‘知的財産活動’の力を理解する。」も、実は同じことです。制度がどうなっている、法律がどう改正された、こんな判例が出た、この判例はこう読むべきだ、といったテーマは、それを専門とする業者間にとっては重要な情報であっても、一般ユーザ、すなわち知財制度をうまく使って事業に役立てたい企業の経営者や事業に携わるビジネスパーソンにとっては、そちら側でうまくやっといてくれ、って話です。彼らが必要としているのはそういった機器、ここでいうところの知財制度に関する情報ではなく、「知財を使ってなにができるのか」という情報です。そしてその「なにができるのか」に対する解が「特許権を取得すると差止や損害賠償が請求できます」に止まっていては、「FaceTimeを使うとテレビ電話ができます」といったレベルで答えているに過ぎない。そこからもう一歩踏み込んで、FaceTimeを使うことでライフスタイルがどう変わり、どう楽しめるのか、そこを伝えないと「やってみようか」とユーザの心を動かすことはできません。これがまさに「‘知的財産活動’の力を理解する」、すなわち「知的財産活動に取組むことでどのような効果が生じるのか、ということを相手の心が動くように説明できる」ということです。
 そしてその「どんないいことがあるのか」という部分を、過去に囚われてしまってはいけない。市場が元気で、経済が成長し、他を押しのけてでもシェアをとろうという経済環境下での「いいこと」と、デフレ経済が長期化して、新しい需要を掘り起こして市場を元気にしていかなければならない経済環境下での「いいこと」は異なるわけです。このデフレ経済の下で知財で何ができるのか。そこを掘り起し、伝えていくことこそが、大きな意味で知財を使ってできることであるはずです。

スティーブ・ジョブズ II
クリエーター情報なし
講談社


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1 コメント

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イノベーション創造 (久野敦司)
2011-12-27 06:47:38
顧客もびっくりの顧客価値を産み出すために、知的財産や資源を組合わせて用いることが必要と思います。請求項には、そのような組合せが記述されています。

http://www.patentisland.com/memo313.html

知的財産権をそのような組合せを実現するグループ内に早期に秩序を形成し、グループが同じ方向を向いて動き出すための交通信号機のように活用することが重要と思います。
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